2012 Fiscal Year Annual Research Report
IR/MAR遺伝子増幅法を核とした、革新的細胞工学技術の発展
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23380203
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 典明 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (10216096)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子増幅 / 蛋白質生産 / 微小核 / 染色体外遺伝因子 / 細胞工学 / 染色体工学 / Double Minutes / HSR |
Outline of Annual Research Achievements |
(課題A) Beta-globin IR配列(2.7 kbp)の中で、遺伝子増幅を指示する最短で592 bpの配列を同定することが出来た。この配列は、AT-rich, 潜在的MAR、及び機能未知の配列からなっていた。この配列は、導入プラスミドの染色体外での維持と増幅過程に必要であることが示唆された。染色体の異所的部位での複製開始をもとに解析した先行論文の結果と比較することで、共通する配列と共通しない配列があった。後者は、染色体外での複製に関係する配列要素と考えられた。(課題B1)COLO 320細胞内で長大で均質なHSRが形成される機構はすでに明確にできた。CHO細胞内では染色体内の小さなリピート配列が出来るのみで、Mtx処理によりそれがfine ladder HSRへと伸長していく。今回、その機構について格段に理解を深めることが出来た。(課題B2)細胞によって染色体外遺伝因子の維持能力に違いがあることを、ヒトーマウス間の細胞融合実験、およびDMの移植実験により明確にすることが出来た。この過程で、予想外に、異種間融合により染色体が分断化する機構について、微小核への取り込みを介した興味深いモデルを得ることが出来た。(課題C)増幅した遺伝子からの発現を高める配列を、ヒトゲノム配列から引き続き探索を行った。しかし、再現性良く発現を高める配列はまだ得られていない。目的の配列が大腸菌内やPCRで増幅しにくい配列である可能性が高いため、この点を念頭に引き続き探索を行う。(課題D)DMを濃縮した微小核を供与細胞から精製する良好な方法が樹立できた。また、マウスの細胞であってヒト由来のDMを効率よく維持できる細胞が同定できた。さらにDMの細胞間伝搬はできた。しかし、そのような細胞は増殖しなかった。この理由として、受容細胞内でDMがPCCにより断片化してしまう可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画のうち、2年が修了した段階である。その時点で、(課題A)はほぼ目的を達成し、現在投稿論文を執筆中である。(課題B1)では、蛋白質生産に重要なCHO細胞において、独特な遺伝子増幅の機構が明確になりつつあるため、順調である。(課題B2)は、当初の目的がかなりの部分達成出来たとともに、研究を行う過程で予想外の点で興味深いモデルが示唆された。これは、異種間細胞融合の際に何故一方の種で染色体の脱落が生じるかを説明するものであり、動植物の育種と関連して重要であるため、今後発展させる価値がある。(課題C)は難航しているが、活発に研究を行っており、どこに問題点があるかが明確になりつつあるため、今後のブレークスルーに期待できる。(課題D)も、当初の目的のかなりの部分が達成出来たが、最終目標には未だ到達できていない。この課題も、どこに問題であるかが明確になってきたので、今後その点を検討することにより乗り越えられる可能性が高い。また、課題C, Dに関して未達の部分が、万一克服できなかったとしても、問題点を明確にすることは、学問上大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(課題A)は、成果について投稿論文を完成させ、平成25年度中に公開されることを目標とし、その時点で終了する。(課題B1)は、現在までの研究を継続して、より詳細な増幅過程の理解と、その証拠固めを行う。このことにより、平成25年度が終了した時点で投稿論文の執筆にかかれることを目標とする。(課題B2)については、細胞融合実験によるDMの安定性と細胞の種類との関連について明確にし、平成25年度が終了した時点で投稿論文の執筆にかかれることを目標とする。また、異種間細胞融合による染色体脱落機構は、新たに生じた極めて重要性の高いテーマであるため、研究を継続する。(課題C)では、大腸菌内やPCRにより増幅しにくい配列に焦点をあて、そのような配列について検索を続ける。(課題D)は、ヒト細胞から精製した微小核内のDMを、受容細胞内に導入させることはできるようになった。しかしそれは、PCC (Premature chromosome condensation)により断片化してしまうことが、2重薬剤耐性となって増殖できるようにならないない原因であると考えている。この点を明確にするために、実際にPCCが生じていることを確認する。さらに、同調培養等により、PCCを回避する方法を検討する。
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