2013 Fiscal Year Annual Research Report
IR/MAR遺伝子増幅法を核とした、革新的細胞工学技術の発展
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23380203
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 典明 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (10216096)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子増幅 / 染色体外遺伝因子 / 組換え蛋白質発現 / エピソーム |
Research Abstract |
(課題A;IR配列をもとに、遺伝子増幅を促進する最小・最強な配列を得て、活用する)前年度までに、目的とする最小・最強な配列を単離することが出来た。当該年度には、文献と比較して吟味することで、得られた配列は染色体内での複製開始に必要な配列とかなりの部分重複しながら、興味深い違いがあることを見いだした。このような議論を含めて、成果をPLosONE誌に公表した。さらに当該年度には、この最短配列を逆位反復配列にして細胞に導入すると、染色体外でエピソームとして維持されやすくなるという、極めて興味深い発見が得られた。(課題B;遺伝子増幅を支配する宿主細胞の遺伝的背景を理解し、活用する)HSRやDMの形成頻度が、細胞株ごとにどのように異なるのかについて、理解が得られた。さらに重要なことに、低酸素状態にすることで、染色体外遺伝因子が維持されやすくなる、という発見をした。これは、低酸素状態におかれている生体内のがん細胞ではDMで増幅しやすいことと良く対応しており、基礎医学的に重要である他に、エピソームベクターの創成や産業応用上極めて重要である。遺伝子増幅が細胞株によって違うのは、低酸素に対する応答の違いを反映しているのかも知れない。(課題C;増幅した遺伝子からの発現を高めるゲノム配列を単離し、活用する)当該年度には、ついに、念願であったそのような配列を単離することができた。この配列は、IR/MAR遺伝子増幅法で遺伝子増幅させた際に、5回の独立した実験で常に遺伝子発現を高めた。3.2 kbpからなる配列は、高度にAT-richであり、bent-構造を形成する配列を3箇所に含んでいた。(課題D;DMを細胞間で水平伝播する実験系を樹立し、活用する)当初計画通りに進行し、一部の細胞ではDMの細胞間転移に成功した。しかし、どのような細胞ででもうまく行くわけではなく、後述のように、低酸素培養と組みあわせて検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画ではAからDの4つの課題を設定した。その中で、課題Aは、完全に達成され、論文公表し、さらに発展課題を進展中である。課題Bは多少当初計画からの変更はあったものの、低酸素環境が染色体外での遺伝子増幅を支持するという極めて重要な結果が得られ、それを発展させることができている。課題Cは、念願の配列をついに手にすることができたので、目的は完全に達成された。この課題も、さらに発展中である。課題Dはもともと野心的な課題であったが、部分的であるにしろ達成出来た。さらに、課題Bで得られた低酸素培養の効果に関する成果と組みあわせることにより、より大きな成果が今後期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(課題A)当初目的は完全に達成した。その過程で、得られた最短配列を逆位反復配列にして、通常の発現プラスミドと混合して細胞に導入すると、染色体外で維持されやすくなることを発見した。これは、IR/MARプラスミドを直鎖状としてその末端をヘアピン構造とすると、染色体外で維持されやすくなるという以前の我々の発見(2009年JBC)に対応している可能性がある。すなわちヘアピン構造は複製されると逆位反復配列になる。今後、このような染色体外維持の機構を明確に理解する。また、そのことにより遺伝子発現が安定的に高まる可能性が高いので、その点を明確にして、バイオ医薬品の生産技術等に応用する(課題B)低酸素状態により、導入遺伝子が染色体外で維持されやすくなることを、様々な条件や細胞株で追試するとともに、その機構を可能な限り理解し、論文公開する。さらに、課題Aの発展計画や課題Dに適用する。(課題C)増幅配列からの遺伝子発現を高める配列が得られたので、その中のどのような配列要素が発現増強に寄与するのかを明確にする。すなわち、ベント構造が3箇所に見られるので、その効果を検討する。また、AT-rich部分の長さによる影響を検討する。得られた成果はすみやかに論文公開する。(課題D)低酸素培養により、染色体外因子DMが標的細胞内で維持されやすくなる可能性が高いため、その点を丁寧に検討する。それが期待通りであれば、DMを細胞間で転移させるという当初計画にあった大事な細胞工学技術を完成させることが出来る。
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