2012 Fiscal Year Annual Research Report
高効率触媒的合成プロセスの開発研究と天然物合成への応用
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23390003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
濱田 康正 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90117846)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 触媒的反応 / パラジウム / ipso-Friedel-Crafts型反応 / アリル位置換反応 / 不斉合成 / シクロヘキサジエノン / ジヒドロフェナントレン / インドール |
Research Abstract |
本研究では高効率触媒的なプロセスの開発と天然物合成への応用を検討した。平成23年度はこれまで報告例のないフェノールのパラジウム触媒ipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応によるスピロ[4.5]シクロヘキサジエノンの不斉合成および芳香族の不斉アルキル化反応を検討し、これに成功した。平成24年度はビフェニル構造のフェノールのipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応を検討し9,10-ジヒドロフェナントレンが高選択的に得られることを見いだした。この反応では米国のTrostらが開発した不斉2座配位子を用いると最高95%eeにて光学活性9,10-ジヒドロフェナントレンが得られる。現在、この方法を用いて生物活性天然有機化合物CedrelinおよびPararycolinの合成へ応用を検討している。このほかにアリルカーボネート部位をプロパルギルカーボネートに変換した基質を用いて、スピロ[4.5]シクロヘキサジエノンの5員環にアレンを含む生成物を得る実験をしたところ、期待したアレン体ではなく転位生成物スピロ[5.5]シクロヘキサジエノンが高収率に得られることを見いだした。この化合物の6員環部は共役ジエンを含んでいる。この反応は初めに生成するアレンのC(sp2)-C(sp3)結合がPd(0)に形式的に酸化的付加して開裂するという新規の反応メカニズムを経て転位生成物を与えることが分かった。 また、ipso-Friedel-Crafts型反応の新たな展開としてフェノールとインドールを炭素鎖で繋いだ基質の酸触媒ipso-Friedel-Crafts型反応を計画し、これまでにない数種の新規の転位型骨格形成反応を開発した。これらの反応はいづれもインドレニウムカチオン、続いてスピロ[4.5]シクロヘキサジエノン中間体を経由して生成物にいたるものであることが判明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では高効率触媒的なプロセスの開発と天然物合成への応用との課題で進めているが、これまでにこの線に沿って研究を行い、数種の新規の触媒的プロセスの開発に成功している。(1)フェノールのパラジウム触媒ipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応によるスピロ[4.5]シクロヘキサジエノンの不斉合成、(2)フェノールのパラジウム触媒ipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応による芳香族アルキル化反応、(3)ビフェニル構造のフェノールのパラジウム触媒ipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応による9,10-ジヒドロフェナントレンの不斉合成、(4)アリルカーボネート部位をプロパルギルカーボネートを有するフェノール基質のパラジウム触媒ipso-Friedel-Crafts型アリル位置換反応による転位生成物スピロ[5.5]シクロヘキサジエノンの新合成法、(5)フェノールとインドールを炭素鎖で繋いだ基質の酸触媒ipso-Friedel-Crafts型反応による転位生成物である多環インドール生成物の一段階合成法、(6)酸触媒ipso-Friedel-Crafts型反応を経由する3-アリールピペリジン、3-アリールピロールの新規合成法をすでに開発し、国際誌に発表した。現在も次々に新規のプロセスが見つかっていることなどを入れると本研究課題は当初の目的を十分に達成していると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
上で述べたようにビフェニル型のフェノール基質分子内ipso-Friedel-Craft型アリル位置換反応からは生物活性天然有機化合物に多い基本骨格9,10-ジヒドロフェナントレン類が得られる。この反応の不斉合成の最適化を行った後、生物活性天然有機化合物CedrelinおよびPararycolinの合成へ応用する。これらの天然物は適当な合成法がないためにこれまで合成されていない。また、フェノールのパラ位にアレンを持つ基質を用いて、新規の分子内ipso-Friedel-Craft型アリル位置換反応も検討する。アレンはMizorogi-Heck反応でアルキル化するとアリルパラジウム錯体が生成する。これは上記の反応の中間体であるので、続いて分子内ipso-Friedel-Craft型アリル位置換反応が進行するはずである。プロパルギルカーボネートの基質ではパラジウム触媒を作用させることにより生じる、アレニルパラジウム中間体の化学と、分子内フリーデル・クラフツ型置換反応の組み合わせることにより、新規三環性ヘテロ環合成法の開発も検討する。酸触媒ipso-Friedel-Crafts型反応を経由する骨格転位反応はなかなか奥の深い反応で次々に新規骨格形成反応が見つかるのでこちらも更に研究を進め、国際誌に発表するようにつとめる。
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Research Products
(11 results)