2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390013
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中村 浩之 学習院大学, 理学部, 教授 (30274434)
|
Keywords | ドラッグデリバリー / 中性子捕捉療法 / ホウ素 / がん治療 / 低侵襲 |
Research Abstract |
中性子捕捉療法は、1968年世界に先駆けて日本で初めて脳腫瘍の治療に臨床応用されて以来、耳下腺がん、舌がんの治療にも適応され、応用範囲の拡大が注目されている。本研究では、腫瘍へのホウ素送達にドラッグデリバリーシステムを利用する。既に本申請者が開発した世界初のホウ素脂質とそのナノカプセル化に成功した技術を基軸に、現在問題となっているがん移植マウスにおける中性子照射後のがんの再発を克服するために、DDSで盲点となっている腫瘍血管から離れたハイポキシア領域へのホウ素薬剤送達を達成させ、低侵襲型がん治療を可能とする根治を目指したホウ素送達システムの確立を目標とする。23年度は以下の課題について検討した。 ①不飽和結合を有するホウ素脂質の開発 申請者は、リン脂質の分子構造を基に、世界で初めてホウ素二分子膜脂質の開発に成功し、そのホウ素リポソーム化によるホウ素デリバリーシステムを確立してきた。そこで、脂質部位に不飽和結合を有するオレイン酸を導入し、マウス生体内での血中安定性および滞留性を調べ、EPR効果の向上による腫瘍内ホウ素濃度を高められるかどうか、大腸がん移植マウスを用いて検討した。その結果、オレイン酸を導入した脂質よりも、炭素ー炭素三重結合を導入したホウ素脂質の方が、血中滞留性が向上することがわかった。 ②蛍光標識ホウ素脂質の開発(ホウ素脂質の可視化) ホウ素脂質の生体内での分布機構を解明するために、蛍光標識化したホウ素脂質の合成および可視化を目的とした。蛍光標識剤には、NBD-Clを用いることとし、合成に成功した。がん移植マウスを用いた実験では、腫瘍組織内の血流の少ない低酸素領域へは十分にホウ素がデリバリーされていないことが分かった。24年度は、この問題点について克服する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホウ素脂質の可視化は腫瘍内分布の情報を得る上で重要であり、中性子照射による抗腫瘍効果に大きく影響する。23年度では、その目的に蛍光標識ホウ素脂質の開発に成功し、がん移植マウスを用いた実験では、腫瘍組織内の血流の少ない低酸素領域へは十分にホウ素がデリバリーされていないことが分かったことから、24年度以降の研究戦略に大いに役立つ結果が得られた。また、この結果は2012年1月にイギリス化学会学術雑誌に論文発表した。また、脂質部位に不飽和結合を有する不飽和脂質ホウ素リポソームの開発および内封ホウ素薬剤の合成にも成功しており、脂質部位にオレイン酸を導入したホウ素脂質よりも、炭素ー炭素三重結合を導入したホウ素脂質の方が、血中滞留性が高いことを明らかにしている。このように研究は、おおむね順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
先にも述べたように、ホウ素薬剤の内封による、低酸素領域へのホウ素デリバリーの検討が必要であることが23年度の研究で明らかとなってきた。また23年度では、すでに脂質部位に不飽和結合を有する不飽和脂質ホウ素リポソームの開発にも成功していることから、脂質部位にオレイン酸を導入したホウ素脂質よりも、炭素ー炭素三重結合を導入したホウ素脂質の方が、血中滞留性が高いことを明らかにしている。そこで、これらと内封薬剤の組み合わせによって、高濃度ホウ素デリバリーが内封ホウ素薬剤の検討を行い、低酸素領域へのホウ素デリバリーを検討し、抗腫瘍効果を得たい。また、リアルタイムでホウ素リポソームを追跡する方法の開発を目指す。このことによって、個々の患者の薬物動態にあった治療が可能となる。具体的には、MRI造影剤であるマグネスコープをホウ素リポソーム内に封入して、動物用MRIを用いて、がん移植マウスの体内におけるホウ素リポソームの動態解析を行う。これによって、血中滞留において安定なリポソームの評価にも繋がることが期待される。その結果を元に、最適なホウ素脂質リポソームの構成成分を決定し、ホウ素薬剤内封との複合により、ホウ素の高集積化リポソームを開発する。実際に、がん移植マウスを用いて、中性子照射によるがん増殖抑制効果について検討する。
|
Research Products
(17 results)