2011 Fiscal Year Annual Research Report
PI3K/Akt経路、TGF-β/Smad経路を標的とした化合物の開発と創薬展開
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23390028
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大塚 雅巳 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (40126008)
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Keywords | PI3K/Akt経路 / TGF-β/Smad経路 / 脳保護 / 癌 / 強皮症 |
Research Abstract |
本研究ではイノシトール骨格をに盤としたPI3K/Akt経路を活性化する化合物、ピリジンと金属結合側鎖からなるTGF-β/Smad経路を阻害する化合物を設計、合成し、両経路のクロストークを制御する薬物を得ることを目的とした。これにより、脳保護、糖尿病、癌、癌転移、強皮症などの医薬品開発のための基礎的成果が期待される。 平成23年度はイノシトール誘導体の合成法を検討した。 イノシトールリン酸はさまざまな生体反応にかかわる重要な化合物で、リン酸の位置を異にする多くの異性体が知られている。従来のイノシトールリン酸の合成法はmyo-イノシトールやキラルプールから誘導するもので、それぞれの位置異性体を合成するために別個の合成経路を開拓しなければならなかった。本研究ではDiels-Alder反応により酸素官能基をもったシクロヘキサン骨格を全合成的に構築し、その途上で順次水酸基を導入し、その都度異なる保護にを導入していくという新しいアプローチを検討した。 はじめにシロキシジエンとメチルビニルケトンとのDiels-Alder反応により2つの酸素置換基をシクロヘキサン環上にもつ化合物を合成した。この化合物にPaquette酸化転位をほどこすことにより3つ目の水酸基をシリル基で保護されたかたちで導入した。次にシクロヘキサン環上のメチルビニルケトンに由来する部分を酸化開裂することで4つ目の酸素官能基を導入した。5、6番目の水酸には不斉ジヒドロキシル化反応により構築し、引き続き長嶋-大野法によるモノアシル化で5、6番目の水酸基を区別した。以上により、6つの水酸基がそれぞれ異なった保護基が導入されたイノシトール誘導体を得ることができた。 平成23年度の結果、全てのイノシトールリン酸に変換が可能な多用途中間体として有用な化合物を合成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の前半の根幹はイノシトールリン脂質のリン酸の各種位置異性体を自在に合成することである。従来myo-イノシトールから水酸基の保護と脱保護を繰り返して合成していたが、平成23年度の研究でDiels-Alder反応を基軸とした多用途合成中間体の合成に成功した。これにより本研究に必要な各種のイノシトールリン脂質誘導体を合成するための突破口を開くことができた。よっておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で合成する化合物はイノシトール誘導体とピリジン配位子の2種類である。イノシトール誘導体については平成23年度にDiels-Alder反応を基軸とした合成法を開発したので、今後は合成したイノシトールリン酸にファルネシル基やジアシルグリセロール部分を連結させ、細胞膜上のAkt蛋白質と相互作用するように構造修飾を行う。ビリジン配位子については、ケリダム酸にシステアミン側鎖を導入することで合成する。得られた合成化合物について、Akt/PI3K経路、TGF-β/Smad経路への作用を検討する。
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