2012 Fiscal Year Annual Research Report
PI3K/Akt経路、TGF‐β/Smad経路を標的とした化合物の開発と創薬展開
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23390028
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大塚 雅巳 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (40126008)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | PI3K/Akt 経路 / TGF-b/Smad 経路 / 脳保護 / 癌 / 強皮症 |
Research Abstract |
本研究ではイノシトール骨格を基盤としたPI3K/Akt 経路を活性化する化合物、ピリジンと金属結合側鎖からなるTGF-b/Smad 経路を阻害する化合物を設計、合成し、両経路のクロストークを制御する薬物を得ることを目的とした。これにより、脳保護、糖尿病、癌、癌転移、強皮症などの医薬品開発のための基礎的成果が期待される。 イノシトール誘導体については、平成24年度は細胞膜結合部位としてドデカノールを有するイノシトールリン酸誘導体の合成を行った。 合成戦略として、初めにイノシトールリン酸部位を構築し、次にアミダイトユニットリン酸化法を用いて膜結合部位を導入する方法を採用した。イノシトールリン酸部位はmyo-イノシトールを出発原料とし、myo-イノシトールの6つある水酸基を選択的に保護・脱保護反応を繰り返し行うことで合成した。膜結合部位はドデカノールに、2置換型ホスホラアミダイトを用いてリン酸基を導入して合成した。続いて、イノシトールリン酸部位に膜結合部位のリン酸ジエステル結合を介した導入を検討し、細胞膜結合部位としてドデカノールをもつイノシトールリン酸誘導体を得た。 ピリジンを持つ金属結合化合物については、ケリダム酸の両カルボキシル基をアルデヒドとした後ににアジド導入、還元して4-アミノピリジン-2,6-ジカルボアルデヒドに導いた。これにシステアミン側鎖を導入した後に側鎖部位窒素にNps基を導入した化合物を得た。ピリジン4位のアミノ基に各種蛋白質認識部位を導入可能である。 平成24年度の結果、PI3K/Akt 経路およびTGF-β/Smad 経路に作用しうる化合物に変換可能な中間体として有用な化合物を合成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の本研究の前半の成果は細胞膜に相互作用するイノシトールリン酸誘導体を得たことであり、これによりPI3K/Akt 経路への作用が可能となった。平成24年度の本研究の後半の成果はピリジン4位に各種官能基を導入する手がかりとなるアミノ基をもった金属結合性化合物を得たことであり、これによりTGF-β/Smad 経路の活性化と阻害への突破口を開くことができた。よっておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で合成する化合物はイノシトール誘導体とピリジン配位子の2種類である。イノシトール誘導体については平成24年度に細胞膜結合部位としてドデカノール部位をもったイノシトールリン酸を合成したので、今後は細胞膜相互作用部位としてファルネシル基やジアシルグリセロール部分をイノシトールリン酸連結させ、細胞膜上のAkt蛋白質とよりよく相互作用するように構造修飾を行う。ピリジン配位子については、ピリジンをもつ化合物に加えて2つのヒスチジンと2つのグリシンからなるペプチド性金属結合化合物合成し、TGF-β/Smad経路への作用を検討する。
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