2011 Fiscal Year Annual Research Report
脂質シグナルによるイオン輸送体の活性制御機構とその構造基盤の解明
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23390046
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
若林 繁夫 独立行政法人国立循環器病研究センター, 分子生理部, 部長 (70158583)
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Keywords | トランスポーター / 生理活性脂質 / 結晶構造 / 創薬 / 細胞内イオン制御 |
Research Abstract |
フォスファチジルイノシトール(4,5)=リン酸やジアシルグリセロールによるイオントランスポータ・チャネルの制御機構の解明は、生理学上重要なテーマであるが、全貌は明らかでない。本研究では、Na+/H+交換輸送体(NHE1)を題材にして、その活性調節に必須な脂質結合ドメイン(LID)の構造と機能を解明することを主眼としている。 (1)LIDの結晶構造解明のための蛋白質精製。NHEの膜直下領域のリコンビナント蛋白質の精製は、その不安定さ(分解と凝集)のために困難である。そこで、主として次の二つのストラテジーに基づいて蛋白質精製を行った。(1)種々の長さのNHE1フラグメントとそのサブユニットCHP1をpDuet大腸菌発現ベクターに組み込み、共発現・共精製。(2)CHP1のC末端側にNHE1フラグメントを導入した融合蛋白質の発現・精製。Native条件下、変性条件下などあらゆる精製条件を検討したのち、PIP_2、ATP、phorbol esterなどのリガンド存在・非存在下で蛋白質安定性の検定と結晶化スクリーニングを行った。結果として、精製度および収量とも申し分ない蛋白質が精製できるが、最終的な結晶化には至っていない。安定な構造をとるために必要な因子が何かを探る必要がある。 (2)NHE1がATPによって制御される機構。NHE1は二次性能動輸送体であり、ATP加水分解のエネルギーを必要としないが、不思議なことに細胞内ATPが無いと生理的なNHE1活性は失われる。このATP要求性はLIDが関与する可能性がある。平成23年度は、SF9細胞よりNHE1を精製し、これががazido-[^<32>P]ATPによってATPによって阻害されるような光架橋を受けることが判明した。変異導入などの手法によってさらなる検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載したいくつかの研究計画において、2年目以降につながる結果を得ている。特にNHE1がATP結合蛋白質であるという新しい知見を得ていること、また脂質結合ドメインに関わるNHE1の制御を阻害する化合物の探索においても興味深い結果を得ている。結晶化のための蛋白質精製に関しては、平成23年度に1年間地道に取り組んだけれども、このプロジェクトが本質的に難しい問題を有することを認識できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、脂質シグナルによる活性制御機構の解明に重点をおいている。その方向性では、1)NHE1へのATP結合の役割、2)NHE1活性化に特化した薬物の検索、3)機械的刺激によっておこる活性化のメカニズム、などに関して興味深い知見を得ており、発展が期待される。こうした脂質結合ドメインのより詳しい性質の理解が結晶構造解析へのステップになると思う。また、計画の一部を変更し、イオン輸送の活性化の結果として起こる細胞機能変化にも着目した研究に今後よりシフトする方針である。
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