2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390049
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
三木 健寿 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (80165985)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | 交感神経活動 / 海馬神経活動 / 動脈圧 / ラット / 高血圧 |
Research Abstract |
本研究は、肥満性高血圧発症時における交感神経活動の中枢性修飾と、その循環調節に果たす役割を定量的かつ時間軸依存的に解明することが目的である。平成24年度は、中枢性神経活動として海馬CA1ニューロンを測定し、同時に腎および腰部交感神経活動の計測をおこなった。そして周波数解析により、海馬神経活動と腎及び腰部交感神経活動の相同性の定量化を試みた。また予備実験として、SHRラットに用いて高血圧発症時の動脈圧と腎及び腰部交感神経活動の計測を開始した。 【方法】ラットの自由行動下での海馬神経活動の長期計測に成功した(現在約1週間)。細胞外マルチニューロンの計測であり、パワーコンポーネント解析により神経活動のグループ分けを行った。交感神経活動の長期計測:我々の研究室で独自開発した方法であり、ユニークな技術を多々有している。解析方法:FFTによる周波数解析とコヒーレンス解析を行った。【結果】周波数解析の結果、海馬CA1神経活動と腎及び腰部交感神経活動は、それぞれ特異な周波数帯にパワーのピークがみられ、共通周波数は0.1Hz以下の低周波であることが明らかになった。さらに、0.1Hz以下の周波数のパワーには行動依存性があり、海馬CA1神経活動と腎及び腰部交感神経活動のそれぞれの相関が高いことも明らかになった。また、海馬CA1神経活動と腎及び腰部交感神経活動の相関は、NREM睡眠時が低く、次に摂食、飲水、REM睡眠、グルーミング、移動行動に順になることが解った。 【考察】0.1Hz以下の低周波でのみ海馬CA1神経活動と腎及び腰部交感神経活動の周波数のピークが一致していたことから、海馬と交感神経活動の情報伝達は、0.1Hz以下の低周波で行われていると考えられる。今後、0.1Hz以下の周波数バンドでの動脈圧との相同性について検討を加え、高血圧発症の中枢性交感神経活動修飾機構の解明を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・中枢神経活動の計測システムの確立を行った:微小のステンレス管(100 micro meter 直径)を4本束ねたオリジナルの電極を作成し、ラットの自由行動下での海馬神経活動の長期計測に成功した(現在約1週間)。細胞外マルチニューロンの計測であり、パワーコンポーネント解析により神経活動のグループ分けを行った。以上中枢神経活動のための手術手技と解析方法の基礎を確立した。 ・交感神経活動の長期計測を行った:腎および腰部交感神経活動の長期計測方法について、研究費による計測装置の新規導入によりその計測解析の時間分解能を大幅に向上させた。ミリ秒から1ヶ月というタイムスパンと分解能を有するシステムを構築した。 ・海馬神経活動と腎及び腰部交感神経活動の同時測定を行った。 ・高血圧発症時の動脈圧と腎及び腰部交感神経活動の同時測定を行った。 以上より、当初の目的達成に向けて組織的に計画を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
・高血圧発症時の交感神経活動と動脈圧の変化の相互作用の定量化 高血圧を自然発症するSHRモデルを用い、8週から12週齢の高血圧発症時の腎および腰部交感神経活動との因果関係を検討する。H25年4月現在でデータが出つつある。交感神経活動の長期計測の成功率が低いため、時間を要するが年内に実験終了が見込まれる。交感神経活動のどの周波数領域が高血圧発症に寄与しているのかが明らかになる。 ・問題点とその解決策 中枢神経系活動の連続測定期間が約10日前後と短い。一方、肥満性高血圧発症には1ヶ月以上の時間時間を要し血圧上昇の程度は小さい。1ヶ月の肥満性高血圧発症時の全過程を追跡記録することが期間内において困難である。そこで、中枢性神経活動―交感神経活動と交感神経活動―高血圧発症の2つに分けて実験を実施し、全体像の把握を試みる。これまでの研究において、0.1Hz以下の周波数領域での相同性の変化が予想され、2つのアプローチに結合が可能であり、当初の目的である、中枢性の高血圧発症に寄与する中枢神経系に寄与が検討できる。
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