2011 Fiscal Year Annual Research Report
心房細動発生における活性酸素種の役割の解析と新規治療法の開発
Project/Area Number |
23390053
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中谷 晴昭 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60113594)
|
Keywords | 活性酸素種 / 老化 / 心房細動 / アップストリームアプローチ / Mn-SODマウス |
Research Abstract |
加齢に伴い心房細動の罹患率が高まり、心筋細胞の老化の背景には活性酸素種(ROS)による機能障害が関与するとされるがROSがどのような電気生理学的異常を引き起こすかは不明である。本研究では、老化によって発生率が高まる心房細動の発生機序としてROSの慢性的負荷に着目し、心筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウス(H/M-SOD-/-)を用い、その病態生理学的解析を行い、抗酸化作用物質の慢性投与の影響を観察し、予防的治療手段の確立の一助とすることを目的とした。11-17週齢の野生型(WT)およびH/M-SOD-/-から摘出し、酸素化した栄養液で灌流したランゲンドルフ心において心房頻回バースト刺激による心房細動の発生率はWT心臓に比してH/M-SOD-/-心臓で高い傾向が観察された。また、その時の有効不応期(ERP)はWT心臓に比してH/M-SOD-/-心臓で長い傾向が観察された。また、心房内伝導時間もH/M-SOD-/-心臓で若干延長していた。抗酸化作用を持つリンゴポリフェノール(AP 0.1%)を含有する飲料水をマウスに長期間投与すると、WTでは明らかな影響を与えなかったが、H/M-SOD-/-ではそれらの電気生理学的変化が軽減する傾向が認められた。また、WTの心房組織に比してH/M-SOD-/-の心房では、Masson’s trichrome染色で評価した心房組織の線維化はWTに比してH/M-SOD-/-心房で増強していたが、APの長期投与で軽減した。また、免疫組織染色で評価した心房組織のコネキシン43はH/M-SOD-/-心房において、WT心房組織に比して減少していたがAPの長期投与で回復傾向が観察された。このように、ROSの慢性負荷により心房組織の線維化やコネキシンの減少が起き、その電気生理学的変化を来すが、抗酸化物質の投与で軽減されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力者の所属研究機関の異動により、一時的に遺伝子改変動物、すなわち心筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスの供給が滞り、一部の実験研究の進展が遅れ、研究経費の繰り越しを行わざるを得なかった。しかしながら、平成24年度になってほぼ23年度に計画した摘出ランゲンドルフ心を用いたin vitro実験は行うことができ、実績報告書に示すような成果が得られた。また、野生型および心筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスの心房組織の線維化を評価する組織学的評価およびコネキシン43の密度を評価する免疫組織染色による検討を行うことはできた。しかしながら、これらの心房筋細胞を用い、パッチクランプ法による活動電位記録、膜電流記録は一部実験を行うことが出来たものの、完全にまとめることは出来ずに次年度の課題として残すことになったため、達成度はやや遅れていると判断せざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
11-17週齢の筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスにおいては、心房・心室の拡大が認められ、心不全状態となっている可能性があるので、より若い週齢のマウスを用いて、ランゲンドルフ心を用いた電気生理学実験を行う。また、酵素的に単離した単一心房筋細胞を用いたパッチクランプ法によってカレントクランプモードによる活動電位記録および膜電流記録を行い、野生型および筋・骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウス心房筋細胞において活動電位幅および膜電流、特に外向きK+電流密度に差異が認められるか否かについて検討を行う。これらの変化が、抗酸化作用を持つリンゴポリフェノール(AP 0.1%)を含有する飲料水の長期投与によって影響を受けるか否かについても、検討を行う予定とした。
|
Research Products
(15 results)