2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体由来ヒト多能性幹細胞の特性解析と再生医療への応用の可能性
Project/Area Number |
23390060
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出沢 真理 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50272323)
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Keywords | 多能性幹細胞 / 体性幹細胞 / 間葉系幹細胞 / 皮膚 / 脊髄 |
Research Abstract |
皮膚や骨髄などの成人ヒト間葉系組織に多能性を有する新たな幹細胞 Multilineage- differentiating Stress Enduring cell(Muse細胞)を見出した。この細胞は多能性幹細胞マーカーを発現し、1細胞から3胚葉性の細胞に分化する能力を有する。ヒトES細胞のマーカーSSEA-3を用いることによりヒト線維芽細胞、骨髄間葉系細胞などの培養細胞の他に、新鮮骨髄液、皮膚組織などの生体組織からも直接分離可能である。成人ヒトの組織に存在することからも腫瘍性がない。多能性を有するが腫瘍性の無いMuse細胞の特性を細胞生物学的視点から解析し、生体内での多能性の制御機構を解明する。また生体内での遊走・分化機構、組織再生への寄与を解析し、この細胞の持つ利点を生かした細胞治療の可能性を開拓することを目的とする。本年度は下記の内容を実施し、成果を得た。 1.Muse細胞の特性 1-1)分裂様式の解析:Muse細胞は1細胞からの分裂する過程の初期において非対称分裂を行い、非Muse細胞がMuse細胞のニッチ環境を作ることを観察した。また非対称分裂に関わるNumblikeが発現されることも確認した。 1-2)Muse細胞における多能性の制御機構:Oct3/4、Nanogのpromoter下流にそれぞれOct3/4、Nanogの構造蛋白とGFPあるいはTd tomatoなどのタグを付加した遺伝子を作製しMuse細胞に導入して、Nanog、Oct3/4のそれぞれの蛋白の局在をtime laps顕微鏡を用い観察した。その結果、接着では細胞質にあるこれらの因子が浮遊になると核に移行することが確認された。 1-3)各組織由来のMuse細胞の比較:皮膚、骨髄以外に脂肪組織、臍帯などの間葉系組織や、心臓、腎臓などの各種臓器におけるMuse細胞の存在や差を調べ、間葉系組織を含め、各臓器の結合組織に散在性にあることが確認された。 2.各種疾患モデルを用いた組織再生能の検討 2-1)in vitroで分化誘導の検証; 皮膚fibroblastや骨髄間葉系細胞から採取したMuse細胞を培養において、骨、脂肪、神経、肝臓、胆道系細胞、表皮細胞、骨格筋などに誘導できることが確認された。 2-2)モデル動物を用いた移植実験:免疫不全マウスの肝障害、糖尿病、脳梗塞、筋変性、皮膚損傷などのモデル動物にヒトMuse細胞を移植したところ、傷害組織にホーミングし、組織に応じた細胞に分化することによって組織修復に寄与することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Muse細胞は一細胞から分裂していく際、初期の段階で非Muse細胞を作り、この非Muse細胞がMuse細胞のニッチ環境を作ることを観察した。また非対称分裂に関わるNumblikeが発現されることも確認している。このような特異なMuse細胞の分裂に伴い、多能性因子の制御機構に関しても調べた。そこでOct3/4、Nanogのpromoter下流にそれぞれOct3/4、Nanogの構造蛋白とGFPないしTd tomatoなどのタグを付加した遺伝子を作製し、ヒトMuse細胞に導入しLiveで観察した。その結果、接着では細胞質にあるこれらの因子が浮遊になると核に移行することが確認された。Muse細胞の間葉系組織における局在、また各臓器における局在を検討したところ、間葉系組織を含め、各臓器の結合組織に散在性にあることが確認された。また脂肪、皮膚、骨髄由来のMuse細胞を次世代シーケンスで比較したところ、それぞれにおいて3胚葉性の分化に関わる因子の発現量に差があることも確認している。Muse細胞の分化能を検討したところ、培養ないし生体内において、骨、脂肪、神経、肝臓、胆道系細胞、インシュリン産生細胞、心筋、表皮細胞、骨格筋に分化すること、また肝障害、糖尿病、脳梗塞、筋変性、皮膚損傷などのモデル動物にヒトMuse細胞を移植したところ、傷害組織にホーミングし、組織に応じた細胞に分化することによって組織修復に寄与することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画から大幅な変更はない。本年度は下記の内容を行う。 1.Muse細胞の特性: 1-1)分裂様式の解析:形成されたMuse細胞由来のClusterを酵素によってバラバラにし、FACSでMuse細胞とnon-Muse細胞を選別し、それぞれの発現因子の差を調べる。また、この情報をもとにMuseとnon-Museの間で相互作用している細胞表面分子を絞り込む。 1-2)多能性の制御機構:一度も浮遊にせずに多能性がオンになったことの無い細胞と、浮遊状態において一度多能性をオンにしたもの、接着-浮遊-接着-浮遊を数回繰り返したもの、それぞれにおいて、神経(外胚葉)、骨・脂肪(中胚葉)、肝臓(内胚葉)への分化誘導の有無、その効率を求め、確かに多能性が推察のように制御されているかを再検証する。 1-3)各組織由来のMuse細胞の比較: 各種臓器から採取したMuse細胞の3胚葉性の細胞への分化効率、また各胚葉への誘導効率の差が由来臓器によって差がみられるかを検討する。 2.各種疾患モデルを用いた組織再生能の検討: 免疫不全マウスの肝障害、糖尿病、脳梗塞、筋変性、皮膚損傷などのモデル動物にGFP lentivirusでラベルしたヒトMuse細胞を尾静脈あるいは局所注入などの方法によって投与し、生着率(GFP陽性細胞の計測)、移植細胞の組織内における分化(組織学的手法によって行う)を評価する。また機能回復としては肝障害では末梢血中におけるヒトアルブミンの検出、糖尿病では血糖値の改善、インシュリンの分泌、脳梗塞では行動評価、筋変性と皮膚損傷では組織検討によって評価を行う。
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Research Products
(44 results)
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[Journal Article] Transplantation of human bone marrow stromal cell-derived Schwann cells reduces cystic cavity and promotes functional recovery after contusion injury of adult rat spinal cord2011
Author(s)
Kamada T, Koda M, Dezawa M, Anahara R, Toyama Y, Yoshinaga K, Hashimoto M, Koshizuka S, Nishio Y, Mannoji C, Okawa A, Yamazaki M
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Journal Title
Neuropathology
Volume: 31(1)
Pages: 48-58
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Multilineage-differentiating stress-enduring (Muse) cells are a primary source of induced pluripotent stem cells in human fibroblasts2011
Author(s)
Wakao S, Kitada M, Kuroda Y, Shigemoto T, Matsuse D, Akashi H, Tanimura Y, Tsuchiyama K, Kikuchi T, Goda M, Nakahata T, Fujiyoshi Y, Dezawa M
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Journal Title
Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.
Volume: 108(24)
Pages: 9875-9880
Peer Reviewed
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