2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体由来ヒト多能性幹細胞の特性解析と再生医療への応用の可能性
Project/Area Number |
23390060
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出沢 真理 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50272323)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 体性幹細胞 / 間葉系幹細胞 / 皮膚 / 骨髄 |
Research Abstract |
皮膚や骨髄などの成人ヒト間葉系組織に多能性を有する新たな幹細胞Muse細胞を見出した。この細胞は3胚葉性のあらゆる細胞に分化でき、ヒトES細胞のマーカーSSEA-3でヒト線維芽細胞や新鮮骨髄液、皮膚組織などから分離可能である。腫瘍性がない事から再生医療への応用が期待されている。H24年度は下記の成果を得た。 1)Muse細胞の傷害部位への遊走因子の同定と組織修復との関係:Muse細胞と非Muse細胞を分離し、Muse細胞に特異的に発現し非Muse細胞には発現しない細胞表面分子を探索した。その結果、特定のG蛋白共役型受容体がMuse細胞にのみ発現しており、細胞膜脂質を元に細胞傷害時に作られる急性炎症物質に対する受容体であることが分かった。Boyden chamberを用いた実験で、Muse細胞のみが遊走性を示し非Muse細胞は反応せず、またTaxiscanにおいても同様の結果が再現された。Muse細胞に特異的な遊走因子が同定された。 2)各組織由来のMuse細胞の比較:ヒト骨髄、脂肪、皮膚の間葉系組織から得られたそれぞれのMuse細胞の遺伝子発現を比較した結果、外胚葉系、内胚葉系の因子は骨髄由来のMuse細胞が最も高く発現し、骨や脂肪などの中胚葉系の因子は脂肪由来Muse細胞が最も高いことが分かった。このことから、対象とする疾患、あるいは分化方向性によってMuse細胞のソースを選んだほうが効果的であることが示唆された。 3)組織再生能の検討:免疫不全マウスを持ちて肝障害、脳梗塞などのモデル動物にGFP lentivirusでラベルしたヒトMuse細胞を尾静脈投与したところ、経血管的に傷害組織に生着し、肝臓では肝細胞、胆管、kupffer細胞などに分化すること、脳梗塞では梗塞部位でTuj-1, NeuN陽性神経細胞として生着することなどが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Muse細胞に特異的な受容体および遊走因子が特定されたことは非常に大きな成果であると考えている。今後生体内でのMuse細胞の動態を制御するのに応用できる可能性がある。また由来組織におけるMuse細胞の性質の違いを解析し、骨髄Museには胚葉の壁を越えた分化能が高いことが分かったことも前進である。骨髄Museと脂肪や皮膚などの他のMuse細胞との本質的な違いは、Muse細胞の発生学的な由来の解明につながるかもしれない。組織修復機能が胚葉の壁を越えた肝臓、脳で確認されたことも再生医学への応用においては重要な成果である。 live観察によるMuse細胞の分裂様式と多能性因子の動態の解析は現在も実験を遂行している。Muse細胞は一細胞から分裂していく際、初期の段階で非Muse細胞を作り、この非Muse細胞がMuse細胞のニッチ環境を作ることを観察した。また非対称分裂に関わるNumblikeが発現されることも確認している。このような特異なMuse細胞の分裂に伴い、多能性因子の制御機構に関しても調べた。そこでOct3/4、Nanogのpromoter下流にそれぞれOct3/4、Nanogの構造蛋白とGFPないしTd tomatoなどのタグを付加した遺伝子を作製し、ヒトMuse細胞に導入しLiveで観察した。その結果、接着では細胞質にあるこれらの因子が浮遊になると核に移行することが確認されたが、そうでないMuse細胞もあり引き続き検討を重ねたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1)分裂様式と多能性因子の制御機構の解析:live観察においてMuse細胞が一細胞から増殖して行く過程で多能性因子の局在の変化をとらえる。さらに浮遊から接着、接着から浮遊への移行による多能性因子の動態を見る。 2)Muse細胞の傷害部位への遊走因子の同定と組織修復との関係:Muse細胞と非Muse細胞を比較し、Muse細胞細胞膜に特異的に発現している因子を絞り込み、ここから傷害組織への遊走に関わる因子の同定を進める。またその受容体を持っているかも調べる。同時にboyden chamberを用いてin vitroでの遊走効果、さらには叙法剤への組み込み移植による生体内での遊走効果、agonistによる遊走効果を併せて検討する。 3)各組織由来のMuse細胞の比較:皮膚・骨髄・脂肪から採取したMuse細胞の3胚葉性の因子の発現等を検討する。 4)各種疾患モデルを用いた組織再生能の検討:免疫不全マウスの肝障害、糖尿病、脳梗塞、筋変性、皮膚損傷などのモデル動物にGFP lentivirusでラベルしたヒトMuse細胞を尾静脈あるいは局所注入などの方法によって投与し、生着率(GFP陽性細胞の計測)、移植細胞の組織内における分化(組織学的手法によって行う)を評価する。また機能回復としては肝障害では末梢血中におけるヒトアルブミンの検出、糖尿病では血糖値の改善、インシュリンの分泌、脳梗塞では行動評価、筋変性と皮膚損傷では組織検討によって評価を行う。
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Research Products
(34 results)
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[Journal Article] Autologous engraftment of A9 dopaminergic neurons induced from mesenchymal stem cells in parkinsonian rhesus macaques.2013
Author(s)
Hayashi T, Wakao S, Kitada M, Ose T, Watabe H, Kuroda Y, Mitsunaga K, Matsuse D, Shigemoto T, Ito A, Ikeda H, Fukuyama H, Onoe H, Tabata Y, Dezawa M.
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Journal Title
J. Clin. Invest.
Volume: 123(1)
Pages: 272-284
Peer Reviewed
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[Journal Article] Transplantation of bone marrow stromal cells-derived neural precursor cells ameliorates deficits in a rat model of complete spinal cord transaction.2012
Author(s)
Aizawa-Kohama M, Endo T, Kitada M, Wakao S, Sumiyoshi A, Matsuse D, Kuroda Y, Morita T, Riera J.J, Kawashima R, Tominaga T, Dezawa M.
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Journal Title
Cell Transplantation
Volume: 掲載確定
Pages: 掲載確定
DOI
Peer Reviewed
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