2012 Fiscal Year Annual Research Report
新たな生物モデル系を用いた直鎖状ポリユビキチン鎖の生理機能解析
Project/Area Number |
23390070
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
徳永 文稔 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (00212069)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | シグナル伝達 / 細胞・組織 / 酵素 / タンパク質 |
Research Abstract |
NF-κBは炎症応答や自然・獲得免疫において重要な役割を果たす転写因子であり、炎症性サイトカイン、細菌・ウイルス感染、DNA修復、紫外線など各種外界ストレスによってシグナル伝達経路が活性化される。NF-κB経路ではキナーゼ活性化による特異的リン酸化とともにユビキチン修飾がタンパク質分解やキナーゼ活性化の足場としてきわめて重要である。我々は、ユビキチンのN末端を介する新規「直鎖状ポリユビキチン鎖」を生成するユビキチンリガーゼ(LUBAC)を同定し、LUBACがIκBキナーゼの制御因子であるNEMOを直鎖状ユビキチン化することで古典的NF-κBシグナル経路の活性化に寄与することを明らかにした。 さらに本研究で我々は、LUBACによるNF-κB活性化を抑制する脱ユビキチン化酵素を検索し、A20(TNFAIP3)を同定した。興味深いことに、A20は脱ユビキチン化酵素活性を介して直鎖状ユビキチンを分解するのではなく、C末端7番目のジンクフィンガー(ZF)ドメインを介して直鎖状ユビキチンに特異的に結合することでNF-κB活性化を阻害した。A20 ZF7と直鎖状ユビキチンの共結晶構造解析を行ったところ、ZF7は遠位ユビキチンのIle44疎水性領域と近位ユビキチンのα-ヘリックス領域を同時に識別することを明らかにした。ZF7の直鎖状ユビキチン認識に関与するアミノ残基は哺乳類だけでなく、アフリカツメガエルなど両生類、ゼブラフィッシュなど魚類、ホヤなど脊索動物まで保存されていることが示された。しかし、A20のZF1-6には保存されていおらず、ZF7が直鎖状ユビキチン結合に特化したドメインとして進化的に高度に保存されている考えられた。これらの結果は、TNFシグナルが発生した脊索動物以降においてA20の直鎖状ユビキチン結合が重要な役割を果たすことを示唆する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は上記研究実績をEMBO J.誌に発表するなど7件の論文発表と4件の学会発表を行うなどの研究成果を挙げており、概ね順調な研究進展を達成したと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
直鎖状ユビキチン化を介したNF-κB活性制御を司る脱ユビキチン化酵素を中心にスクリーニングを行い、重要な制御因子の同定を進める。また、進化的保存性を考慮してNF-κB活性制御におけるLUBACユビキチンリガーゼ複合体や直鎖状ユビキチン産生の重要性の研究を推進する。また、NF-κBシグナル解析に用いる新たな細胞・動物モデルの構築を進める。
|