2012 Fiscal Year Annual Research Report
Wolfram症候群をモデルとした糖尿病におけるβ細胞不全のメカニズム解析
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23390080
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
谷澤 幸生 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00217142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田部 勝也 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (00397994)
太田 康晴 山口大学, 医学部, 准教授 (60448280)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 糖尿病 / インスリン分泌 / 小胞体ストレス / β細胞 / ウォルフラム症候群 |
Research Abstract |
インスリン分泌顆粒に存在するWFS1 蛋白質の機能、インスリン分泌調節上の役割を、特に分泌顆粒開口放出のpriming との関連において検討した。WFS1蛋白質は分泌顆粒内の酸性維持に関与しており、顆粒内が酸性化されていることは分泌に際してのPrimingに重要である。Wfs1を欠失するβ細胞では、細胞膜の脱分極に引き続く、インスリン分泌の早期相(第1相)が障害されていることが明らかになった。一方で、インクレチンによる分泌増強作用は維持されており、Wofram症候群の患者に対して、インクレチン薬が部分的に有効である可能性が示唆された。 糖尿病発症wfs1 欠損マウスのランゲルハンス氏島では時計関連遺伝子発現の変化がみられる。近年、時計遺伝子はβ細胞機能や量に対して重要な役割を持つことが明らかになっている。膵ラ氏島においても、時計関連遺伝子は24時間の周期で規則的に発現が変動し、その振幅は視交叉上核や、脂肪組織、肝臓においてよりもむしろ大きいことを明らかにした。また、β細胞機能に重要な役割を持つ転写因子Arntが時計遺伝子Dbpにより正に、E4bp4により負に制御されることを見い出した。 Wfs1 欠損マウスでβ細胞死には小胞体ストレスが深く関与するが、小胞体ストレスによるβ細胞死のメカニズムの一端を明らかにした。GSK3はインスリンシグナルの下流に存在し、Aktによりリン酸化を受けて活性が抑制される。GSK3は小胞体ストレスによっても活性化されることを見い出した。GSK3は小胞体ストレス応答に深く関わるATF4の翻訳後修飾によりその安定性を調節する。GSK3の過剰活性はATF4の分解を促進し、小胞体ストレスに対する応答障害を来して、β細胞死に繋がることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インスリン分泌顆粒に存在するWFS1 蛋白質の機能、インスリン分泌調節上の役割については、Wfs1欠損マウスにおけるインスリン分泌障害パターンの詳細な解析を行った。さらに分子メカニズムの解析を進めるにあたっての基礎的データが蓄積されている。 ランゲルハンス氏島での時計関連遺伝子発現の詳細な分析を行った。Arntが時計遺伝子より発現調節を受けることを示し、時計遺伝子とβ細胞機能を繋ぐ分子の一端を解明している。ラ氏島での時計遺伝子発現の詳細な検討を順調に進めており、また、時計遺伝子をβ細胞に特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成してその表現型の解析中である。 小胞体ストレスによるβ細胞死にGSK3の活性化が関与することを見い出した。これは今まで知られていない知見である。GSK3の活性によりATF4のubiquitin-proteasome系での分解が制御されていることを見い出し、小胞体ストレスとGSK3、アポトーシスを結びつける分子基盤を明らかにしつつある。さらにその詳細についての検討を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
インスリン分泌顆粒に存在するWFS1 蛋白質の機能、インスリン分泌調節上の役割について、特に分泌顆粒開口放出のpriming との関連においてさらに検討を進める。すなわち、WFS1蛋白質と顆粒内酸性化、インスリン分泌障害との関連をさらに明確にするとともに、酸性化を調節する機構、さらに酸性化がどのように分泌顆粒のprimingに繋がるのか、そのメカニズムにも踏み込みたい。 時計関連遺伝子とβ細胞機能および量の異常を解明するために、ある時計関連遺伝子をβ細胞で特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成した。予備的検討では、顕著はインスリン分泌低下を伴い、耐糖能異常を来す。インスリン分泌障害について、膵潅流などにより詳細に検討するとともに、ラ氏島での遺伝子発現等の検討により、表現型に至分子メカニズムを解明してゆく。 GSK3が小胞体ストレスによるβ細胞障害(β細胞死)に深く関わることを明らかにした。GSKによるATF4の安定性の調節がそのメカニズムの一端であるが、GSK3がいかにATF4のturn overを調節するのか、そのメカニズムの解明を進めてゆく。また、GSK活性阻害はATF4の発現増強によるβ細胞死を抑制するが、そのメカニズムを明らかにしてゆく。
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Research Products
(16 results)