2012 Fiscal Year Annual Research Report
新たなヒト・リンパ球ナチュラル・ヘルパー細胞の同定と疾患への関与
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23390086
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 健人 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (60230463)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 病理学 / 免疫学 / 自然免疫 / メタボリック症候群 |
Research Abstract |
申請者らは、マウス脂肪組織に存在する新しいリンパ球を発見し、自然免疫系の一部を担当する細胞と考え、ナチュラル・ヘルパー(NH)細胞と名付けた。このNH細胞は、IL-5やIL-6を恒常的に産生することで、B細胞のIgA産生促進や腹腔内B1細胞の自己複製を支持するとともに、IL-25やIL-33刺激により、IL-5やIL-13などの2型ヘルパーT細胞(Th2)タイプのサイトカインを多量に産生し、寄生虫感染防御に必須であることを見出した。そこで本研究では、ヒトにおけるFALCの同定とNH細胞の機能解析を行い、さらに各種疾患における関与について明らかにすべく、以下の課題を遂行し、以下の成果を得ている。1)ヒト全身脂肪組織におけるFALCを同定し、構成細胞を解析するなかで、腸間膜がもっともFALCが明瞭で、NH細胞が多いことが判明しつつある。腸間膜以外では、大網、腎脂肪被膜、生殖器周囲、後腹膜に一定数存在すること、縦隔、皮下、眼窩の脂肪組織にはほとんど認められないことを見出している。2)剖検症例の腸間膜からFALCにあるNH細胞を単離し、サイトカイン刺激後の遺伝子発現変化や転写因子発現を網羅的に解析している。その結果、ヒトNH細胞も自然免疫担当細胞として、マウスと類似した遺伝子発現やサイトカン産生能を有することが明らかとなった。3)過去20年間の剖検症例において、糖尿病、メタボリック症候群症例および対照症例の腸間膜におけるFALCの病理学的解析を行い、糖尿病およびメタボリック症候群においてFALC組織の面積の増大傾向が見られた。最終年度はNH細胞について定量的に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、ヒト全身脂肪組織におけるFALCを同定し、構成細胞を解析するなかで、腸間膜がもっともFALCが明瞭で、NH細胞が多いことが判明しつつある。腸間膜以外では、大網、腎脂肪被膜、生殖器周囲、後腹膜に一定数存在すること、縦隔、皮下、眼窩の脂肪組織にはほとんど認められないことを見出している。剖検症例の腸間膜からFALCにあるNH細胞を単離し、サイトカイン刺激後の遺伝子発現変化や転写因子発現を網羅的に解析した結果、ヒトNH細胞も自然免疫担当細胞として、マウスと類似した遺伝子発現やサイトカン産生能を有することが明らかとなった。また過去20年間の剖検症例において、糖尿病、メタボリック症候群症例および対照症例の腸間膜におけるFALCの病理学的解析を行い、糖尿病およびメタボリック症候群においてFALC組織の面積の増大傾向が見られた。これまでの成果はおおむね順調であり、最終年度はモデルマウスの作成を通じてさらに検討する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 各種脂肪組織を成人剖検症例より採取し、FALCの局在を明らかにする。NH細胞の観察は、c-kit/IL-7受容体およびIL-33受容体/CD3の重染色にて行う。フローサイトメーターでは、血球系統マーカーとc-kit,IL-7受容体,IL-33受容体を検討することで、FALC内のNH細胞と他系統の血球を同定・定量する。2. FALCにあるNH細胞を単離し、自然免疫担当細胞としての機能を解析する。剖検症例の各種脂肪組織から、c-kit,IL-7受容体,IL-33受容体陽性細胞をNH細胞としてソーティングする。単離された細胞については、光学および電子顕微鏡により形態観察を行う。また単離された細胞を培養し、各種サイトカイン産生能、転写因子群発現を明らかにする。また試験管内において、刺激後の各種サイトカイン産生能を測定する。また生体内ヒトNH細胞の機能を解析するために、ヒトNH細胞をCSFE蛍光染色してから、免疫不全マウス腹腔内へ移植し、その生存と期間および増殖能を観察し、さらに一定期間後にマウスを解剖し、全身の脂肪組織やリンパ節、脾臓などを組織学的に検討することで、局在を明らかにする。3. メタボリック症候群、糖尿病、アレルギー疾患症例症例でのFALCの病理学的解析を行い、NH細胞の動態、機能を明らかにする。剖検例からの脂肪組織におけるFALCの形態学的変化を解析する。解析は1同様の染色標本について、画像解析ソフトImageProPlusを用いて定量的に行う。またこれらの脂肪組織におけるマクロファージについて、活性化抗原発現を検討し、M1/M2マクロファージの比率を検討する。これらの脂肪組織から単離したNH細胞については、2同様にサイトカイン産生能あるいは各種の刺激後のサイトカイン産生能を解析し、NH細胞の機能変化の有無を明らかにする。
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