2012 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイドーシス発症機構の実験病理学的解明と予防・治療法の開発
Project/Area Number |
23390093
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樋口 京一 信州大学, 医学系研究科, 教授 (20173156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤下 仁子 信州大学, 医学系研究科, 助教 (40359732)
森 政之 信州大学, 医学系研究科, 准教授 (60273190)
亀谷 富由樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (70186013)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アミロイド / マウス / ApoA-II / 伝播 / トランスジェニックマウス / 線維形成 / コレステロール / 小胞体ストレス |
Research Abstract |
研究の目的と研究実施計画は以下の通りである。『アミロイドーシスは蛋白質が病的構造を取り、アミロイド線維として組織に沈着し障害を与える疾患群であり、患者数も多く病態の解明と治療法の開発が希求されている。AApoAIIを中心とした各種全身性アミロイドーシスの既存および新たに作成するモデルマウスを駆使して、(1)個体間及び組織間の伝播の担体(分子及び細胞)と経路を明らかにする。(2)熱ショック転写因子 (HSF1)やアポリポ蛋白質欠損マウス等を用いて蛋白質恒常性維持機構がアミロイドーシスの発症や治療に及ぼす効果を解析する。これらの研究によってアミロイドーシスの包括的な病理学的把握を達成し、各種アミロイドーシスの治療、予防法の開発を目指す。 本年度(24年度)は、実施計画(1)に基づきApoA-IIのC末端にMycで標識したApoa2c-mycのトランスジェニックマウス(ApoA2-mycTg/mApoa2-/-)を作成した。詳細を解析中である。さらに伝播経路を明らかにするために、糞や血液中に含まれるアミロイド線維の解析を行っている。体内に侵入したアミロイド線維は,先ず腸管と舌へ集積するようである。さらにヒトAA アミロイドーシスの前駆蛋白質SAAを過剰発現するトランスジェニックマウスやアミロイド原生が強いヒトβ2ミクログロブリン変異体(β2MD76N)のトランスジェニックマウスを作成中である。実施計画(2)に基づき、アミロイド沈着と小胞体ストレスの関連を調べた結果、細胞外へのアミロイド線維の沈着に伴い、ストレスセンサーであるBip/GRP74蛋白質が増大する事が明らかになった。現在,Bipの下流経路の解析を行っている。また昨年度までにapoA-Iの欠損(mApoa1-/-)がアミロイドーシスを促進する事が明らかになったため、hTTRTg/Apoa1-/-等を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析ツールとしてのトランスジェニックマウスの作成は計画以上に順調に進展したが、遺伝的背景を同一にするための戻し交配の段階で、特に高発現の系統が繁殖率の低下を招き、解析の遅延を引き起こした。しかし現在は順調に繁殖が可能となり、今後の解析がスピードアップできる。一方伝播を担う担体の解析に関しては、やや遅れている。これは解析に用いるマウス(自家繁殖の SAMR1C系マウス)と飼育スペースの慢性的な不足、解析に要する時間(最低2ヶ月から4ヶ月)が原因であるが、なんとか工夫しながら効率よく推進する必要がある。ApoA-Iノックアウトマウスを用いた解析は計画以上に進展し、ApoA-I欠損がアミロドーシス促進作用を示したため、他のアミロイドーシスモデルマウスとの交配を行っている。Unfolded Protein Responseの解析はやや遅れていたが、漸く安定した結果を得る事ができるようになり、解析のさらなるスピードアップを行っている。また昨年度には開発したアミロドモデルマウスがアメリカへ分与され、論文として発表された(PNAS USA 2011)のは予想外の成果であった。試験管内でのAApoAIIアミロイド線維形反応の解析はN末端とC末端ペプチドの相互作用が重要であること、さらにC末端に変異を持つF型ペプチドが非常に強力は線維形成阻害作用を持つ事の発見は予想外の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
アミロイド線維の成体でのMyc標識に関してTgマウス(ApoA2-mycTg/mApoa2-/-)が完成したので、詳細な解析をスタートした。このTgマウスをにAApoAIIアミロイド線維を投与した結果、投与したアミロイド線維は先ず腸管や舌へ集積するが、アミロイド線維への変換誘導は肺からスタートする事が明らかになった。今後はMycTag や蛍光色素でのアミロイド線維をラベルし、さらに詳細な伝播経路や、線維構造への変換のキネティクスの解析を推進する。 血液や、糞中のアミロイド線維を介した伝播の解析は、スピードアップを図りたい。Tgマウスの純系化課程での繁殖率の低下や伝播解析に用いるマウスや飼育スペースの問題が研究推進の律速段階であったが、なんとか効率化(繁殖率の良いラインの選抜、実験計画の効率化、飼育スペースの確保等)を計っている。 HSF1ノックアウトマウスやERストレスの解析は、スクリーニングや解析方法等の問題で期待していた程に研究が進まなかったが、SAMR1C系マウスを用いた研究へ切り替え、安定した結果を得る事が可能となった。今後はこの系でスピードアップを達成する。試験管内でのアミロイド形成機構の解析はユニークな結果を得る事ができたのでコツコツと慎重に進めたい。アメリカとのアミロイドーシスのイメージングに関する共同研究は推進する。 AApoAIIアミロイド線維の伝播性を担う分子種の解析を新たに進めているが、予想に反して、オリゴマーや可溶性の分子種はほとんど観察されず、線維構造が伝播の主要分子種である事が示唆されて来たので、毒性の問題とも関連させながら進めて行く計画である。
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