2012 Fiscal Year Annual Research Report
肺炎レンサ球菌の菌体表層タンパクによる自然免疫回避機構の解析
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23390103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浜田 茂幸 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60028777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 重忠 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50273694)
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学総合研究科, 教授 (50397717)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肺炎レンサ球菌 / 免疫回避 / 菌体表層タンパク / 貪食細胞 / プロテアーゼ |
Research Abstract |
肺炎レンサ球菌はヒト口腔内や上気道に常在することがあり,高齢者における肺炎の起因菌や慢性気道疾患の増悪の原因菌となる.また,本菌は髄膜炎や敗血症などの致死性の高い侵襲性疾患を惹起することでも知られており,高齢者人口や薬剤耐性菌の増加による肺炎球菌感染症の蔓延が懸念されている. 肺炎レンサ球菌の感染病巣では好中球の浸潤を伴う炎症反応が著しく認められる.しかしながら,肺炎レンサ球菌はしばしば貪食を回避し,組織深部へと感染を拡大させる.よって,肺炎レンサ球菌は貪食回避機構を備えていることが推測される.しかし,その詳細な機構について,不明な点が多い.そこで,肺炎レンサ球菌が貪食を回避する機構として,食細胞へ直接作用する場合と,各種サイトカインや補体などに作用して間接的に影響を及ぼす場合があると仮説を立て,本課題研究を推進した. 本年度は,肺炎レンサ球菌の菌体表層タンパクの網羅的解析とゲノムデータベースを用いたin silco解析を並行して行い,肺炎レンサ球菌の菌体表層に局在する好中球結合タンパクを選出した.ついで,好中球結合タンパクがヒト単球細胞培養株ならびにヒト好中球に対してNETs (neutrophil extracellular traps)の形成を誘導することを明らかにした.さらに,同タンパクの質量分析を行い,α-enolaseであると同定した.以上の結果より,肺炎レンサ球菌はα-enolaseの作用により好中球へNETsを誘導し貪食による殺菌を逃れると推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺炎レンサ球菌のα-enolase組換えタンパクに関する機能検索の一部を遂行できたことから,おおむね計画通りに進展していると考えられる. また,関連の英語論文を国際的な専門学術雑誌に投稿し,査読を経て掲載されたことからも,計画の親展が順調と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
さらに,新たな好中球等の貪食細胞に結合する細菌因子の同定,ならびに各種サイトカインの分解を行う分子の同定を行う.同定された分子について,抗貪食能に及ぼす影響,貪食細胞の活性化に及ぼす影響,作用する宿主分子の同定,宿主分子との相互作用解析,肺炎レンサ球菌臨床分離株における分布,およびマウス感染モデルを用いた病原性の評価を行う.近縁のレンサ球菌種に関しても同様の解析を行う.
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