2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀口 安彦 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00183939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安倍 裕順 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00379265)
神谷 重樹 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (60379089)
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Keywords | 百日咳 / 気管支敗血症菌 / 咳嗽発作 |
Research Abstract |
1.感染動物モデルの咳嗽発作の観察データの収集 百日咳の感染モデルとして、気管支敗血症菌のラット感染実験を行った。10-1,000 CFU/ラットの本菌をラットに鼻腔内投与したところ、少なくとも感染後60日まで気管および肺から生菌が回収できた。 また感染3-5日後から咳嗽発作と思われる症状が現れた。この咳嗽症状は感染後12-14日まで継続した。この咳嗽発作は、非感染群では認められなかった。感染ラットの気管および肺の組織切片を作製し、病理検査を試みたが、顕著な病変や免疫細胞の浸潤は認められなかった。これらの結果を検討し、ラット感染モデル作製のための好適条件を決定した。 2.気管支敗血症菌の菌体破砕液からの咳発作原因分子の単離同定 気管支敗血症菌の破砕菌液をラット鼻腔内に5日連続投与したところ、咳嗽発作が再現できた。この咳嗽発作は、ΔC株の破砕菌液では起こらなかった。さらに破砕菌液をあらかじめ熱処理しても咳嗽発作は起こらない。研究計画当初は、破砕菌液中に含まれる咳嗽発作の原因分子の分離を考えたが、当該分子同定のためのスクリーニングに膨大なラット数と日数が要するため方針を変更し、ΔC株と野生型株の全ゲノム配列を決定して、遺伝子内の変異の存否を調べて責任遺伝子を同定する方法をとることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット感染モデルの経過観察データの収集は概ね予定通り進捗した。本実験で、回収菌数の経時変化、病理切片観察、咳嗽の程度などの観察結果を総合して、実施プロトコールの詳細を決定することができた。本研究課題の助成繰越の原因となった飼育環境の変化による咳嗽への影響については不明な点が多く、まだ検討するべき余地があるが、これは本研究課題とは別のテーマとしたい。また、感染ラットの病理切片の例数がまだ本研究では少ないため、引き続き感染実験を行い、切片を作製して観察を行う予定である。咳発作の原因分子の同定については、菌破砕液から原因分子を分画するために必要なスクリーニングに、予想外に多くのラットを使用しなければならないことがわかり、この点で方法の転換を余儀なくされたが、ゲノム配列の異同から責任遺伝子にアプローチする方法も当初の計画には含まれており、特に研究計画の大きな変更を要することもなく、また計画の進捗が遅れるという結果には陥っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果により決定された感染条件および観察条件で、ラット感染モデルの感染データをさらに収集する予定である。 咳嗽発症の責任遺伝子の同定については、気管支敗血症菌の ΔC株と野性型株のゲノム比較により達成する予定である。気管支敗血症菌の全ゲノム配列はすでに決定され報告されている例があり、これを参照データとして利用可能であるので、ゲノム配列決定の上で予想される大きな障害はない。今後は、責任遺伝子の同定が研究課題推進のための律速段階となるので、ゲノム配列の決定と ΔC株と野性株の相互比較に注力することにする。
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