2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23390111
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩田 達雄 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00187329)
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Keywords | HIV感染症 / 宿主因子 / 感染抵抗性 / 生理リガンド |
Research Abstract |
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV1)は宿主細胞に侵入後、コアが崩壊し(脱殻)、逆転写、核移行、インテグレーションの各過程を経てウイルスタンパク質の発現へと至る。これまで脱殻は細胞侵入後速やかに行われ、ゲノムRNAを放出して逆転写を開始させる役割のみを担うと考えられてきた。しかし、最近、カプシドの変異が逆転写をはじめとする様々なHIVの細胞内複製過程に影響するとの報告があり、ゲノム放出以外にも何らかの役割を果たしている可能性が考えられるようになった。我々はサル細胞で増殖可能なHIV-1(サル指向性HIV-1)を作成する過程で、カプシド変異によりサル細胞での増殖能を獲得した代わりに、ヒト細胞での増殖能が低下したウイルスを得る事ができた。そこで、本研究ではこのサル指向性HIV-1(4/5S6/7S)のヒト細胞での複製能低下をもたらした分子機構を検討した。感染後の細胞内のウイルスcDNA量をリアルタイムPCR法で経時的に測定した所、4/5S6/7Sは感染初期の逆転写量は野生型よりもむしろ多かったが核内cDNA量は低下しており、核移行の過程が阻害されていると考えられた。カプシド変異によりコアの安定性が変化し、その後の複製過程に影響が出たと考えられたので、次に脱殻の速度を測定した。脱殻の速度は、蛍光タンパク質でラベルしたHIV-1を使い、蛍光顕微鏡下でコアの崩壊を観察するin situ uncoating assayを行って測定した。その結果、4/5S6/7Sの脱殻は野生型と比べ遅延していることが明らかになった。以上の結果、サル指向性HIV-14/5S6/7Sにおいてはカプシド変異による脱殻の遅延が何らかの機構で核移行効率を低下させ、ヒト細胞での複製能が低下したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり、カプシド蛋白質に導入した変異によりヒト細胞での感染初期過程の進行が著しく低下したHIV-1変異株のヒト細胞における脱殻の速度を測定することができ、蛍光顕微鏡を用いた脱殻解析のための実験系を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
感染阻害可能なウイルス特異性の異なる様々なサル種のHIV-1感染抵抗性因子TRIM5alpha存在下でのHIV-1の脱殻状況を検討する。また、細胞内シグナル伝達経路におけるTRIM5alphaの役割を、TRIM5alphaが結合するシグナル伝達因子の機能構造を明らかにすることにより解析する。
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