2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390111
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩田 達雄 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00187329)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | HIV感染症 / 宿主因子 / 感染抵抗性 / 生理的リガンド |
Research Abstract |
ヒトTRIM5αのcoiled-coil領域とSPRY領域の間のリンカー部分の一塩基多型により生じる249番目のアミノ酸のグリシン(G)からアスパラギン酸 (D)への変異が抗HIV-1効果に及ぼす影響を検討した。249Dのアレル頻度は欧米人では5%ほどだが、日本人では40%を超えることがデータベース検索から判明した。抗HIV-1効果は249GのTRIM5αのほうが249DのTRIM5αよりわずかに強いことが、多段増殖実験ならびに感染初期過程のみを検出する実験の両方で示された。日本人およびインド人において、249Dのアレル頻度をHIV-1感染者と非感染者で比較したところ、感染者におけるDのアレル頻度が有意に高いことから、この多型による抗HIV-1効果の減弱が個体のHIV-1感染成立にも影響した可能性が示唆された。二次構造予測を行ったところ、G249D変異によりcoiled-coil領域のα-ヘリックスがリンカー部分まで延長するとの結果が得られた。従って、249Dを持つヒトTRIM5αは、249Gのものよりもリンカー部分の可塑性が失われるために、ウイルスカプシドの認識力が減弱している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり、ヒトTRIM5αの一塩基多型に伴う構造変化の抗HIV作用に及ぼす影響を解析し、欧米人には頻度が低いために従来見逃されていたが、日本人には頻度の高くて抗HIV作用を減弱させる一塩基多型を見出すことができた。しかし、当初の目的の一つに掲げていたTRIM5αのSPRY領域の三次元構造解析については、米国のグループに先に報告されてしまったために継続は断念し、今後は平成23年度に確立した細胞内イメージング技術を利用したHIVの脱殻解析に集中することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に確立した細胞内イメージング技術を用いて感染阻害可能なウイルス特異性の異なる様々なサル種のTRIM5α存在下でのHIV-1の脱殻状況を検討する。また、HIV 2型(HIV-2)についてもHIV-1と同様の実験系の確立を試みる。HIV-2の場合、カプシド蛋白質の1アミノ酸の変異でカニクイザルTRIM5αによる感染阻害から完全に逃避し得るので、HIVの脱殻へのTRIM5αの影響をより正確に検討できる利点がある。 様々な細胞質内小器官や細胞骨格を染色し、細胞内に侵入したHIVコアや脱殻後のコアの細胞内分布と重ね合わせ、HIVの脱殻と特定の細胞内領域が関係するか否かを検討する。そして、その分布がTRIM5αの存在により変化するか否かを検討する。更に、HIV-1コアと細胞質内で相互作用するサイクロフィリンAの発現をsiRNA等によりノックアウトした状態でも検討する。 申請者らはTRIM5αの抗ウイルス作用にはプロテアソーム依存性経路とプロテアソーム非依存性経路が共存し、ウイルスとTRIM5αの組み合わせにより用いられる経路が決まることを見出しており、プロアソーム依存性経路のみが用いられる組み合わせと非依存性経路のみが用いられる組み合わせを上記の系で比較検討し、それぞれの経路がHIVコアの脱殻から核移行へのどの過程でHIVコアに作用しているかを解析する。さらにプロテアソーム阻害剤の影響を検討する。
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Research Products
(15 results)