2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390123
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
堀 昌平 独立行政法人理化学研究所, 免疫恒常性研究ユニット, ユニットリーダー (50392113)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自己免疫 / 自己免疫寛容 / 免疫制御 / 制御性T細胞 / 細胞分化 / 可塑性 |
Research Abstract |
Foxp3+制御性T細胞(Treg)は免疫抑制機能にコミットした細胞系列であり、環境からの様々な擾乱に対しても安定に分化状態を維持することで自己免疫寛容と免疫恒常性を保証している。我々は、Foxp3+ T細胞は不均一な細胞集団であり、多くはFoxp3発現を“記憶”して抑制機能に不可逆的にコミットしているものの、一部は環境からの擾乱に対してFoxp3発現を失ってヘルパーT細胞(Th)へ分化する可塑性を示すことを報告してきた。今年度は、Tregへの不可逆的運命決定を規定する外因性および内因性メカニズムを解明するために、以下の研究を進めた。 1. 内因性メカニズム 昨年度、Tregにおける記憶を伴う頑健なFoxp3発現はFoxp3遺伝子の非翻訳領域のDNA脱メチル化を伴うことを報告した。本年度、胸腺におけるこの脱メチル化過程を詳細に解析し、Foxp3+胸腺細胞の分化成熟に伴って細胞分裂非依存的に脱メチル化が進行することを見出し、activeな脱メチル化機構が関与する可能性を示唆した。また、不可逆的な系列決定を制御する転写因子ネットワークを推定するために、in vitroにおけるTreg分化系を用いてRNA-seqによるtranscriptomeの時系列解析を進め、安定なTreg分化と相関して活性化する転写因子を同定した。 2. 外因性メカニズム モデル自己抗原に対するTCRトランスジェニックマウスを用いた解析から、intraclonal competitionによりTregへの不可逆的な系列決定が阻害されることを見出した。そして、胸腺髄質上皮細胞に発現して組織特異的抗原の発現を制御する転写因子Aireを欠損した胸腺環境下ではこのintraclonal competitionのために可塑性を示すFoxp3+ T細胞が増加してTregへの系列決定が阻害される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tregへの不可逆的な運命決定を制御する内因性および外因性メカニズムに関して、順調に研究が進展している。内因性メカニズムに関しては、胸腺におけるFoxp3遺伝子のDNA脱メチル化過程を詳細に解析し、論文発表を行った(Toker et al. J Immunol, 2013)。また、Tregへの不可逆的な運命決定を制御する転写因子ネットワークに関しても、transcriptomeの時系列解析を行い、候補の絞り込みを行うことができた。外因性メカニズムに関しても、intraclonal competition、Aireの役割を示唆する重要な手掛かりを得ることができた。一方、Treg運命決定における抗原特異性の役割に関しては、当初の計画通りには進まず、来年度に研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度研究を進展させられなかった、Treg運命決定における抗原特異性の役割に関しては、Treg由来TCRトランスジェニックマウスを樹立できたので、その系を利用して研究を進める。内因性メカニズムに関しては、Treg分化過程でのtranscriptome, epigenomeの時系列解析を進めるとともに、これまでの解析から推定された幾つかの転写因子に関してその機能解析を行う。外因性メカニズムに関しては、intraclonal competition, Aireの役割に関してさらに解析を進め、論文発表を目指す。
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