2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質によるエピジェネティクス変化と次世代影響の解明
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23390157
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安住 薫 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (90221720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 玲子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任教授 (80112449)
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Keywords | 環境化学物質 / 低出生体重 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / 臍帯血DNA / LINE-1 |
Research Abstract |
(1)「前向き出生コホート(母児514組)」における低出生体重児の各種データ解析 北海道スタディ小コホート(母児514組)の母児調査票および母体血各種化学物質濃度データを用いて、網羅的DNAメチル化解析に供するサンプルの選別を試みた。514児の内、子宮内胎児発育遅延と診断された児は41名おり、平均出生体重は2497gで、健常児の平均出生体重(3087g)より低かった。子宮内発育遅延児の母親群の血液では、ダイオキシン、PCB、PFOSの平均濃度が、健常児の母親群血液中より若干高く検出されていた。また、妊娠中の喫煙の割合も子宮内発育遅延児の母親群の方が健常児の母親群より高かった。しかしながら、個体別の情報を比較すると、必ずしも子宮内発育遅延児の母親血液中の各種化学物質濃度が高いわけではなかった。そのため、現在までに得られている情報を基にして検体を選別し、網羅的なDNAメチル化解析をする当初の予定を変更し、ゲノムのメチル化状態の指標とされているlong interspersed nucleotide element-1 (LINE-1)のメチル化状態を児の臍帯血DNAを用いて調べ、子宮内発育遅延児と健常児におけるゲノムのLINE-1メチル化状態を比較することにした。 (2)パイロシーケンサーを用いたDNAメチル化測定条件の確立 キアゲン社のパイロシーケンサー(PyroMark)を用いて、ゲノムのLINE-1メチル化状態を測定する条件を確立した。市販のヒトゲノムサンプル(健常人)を用いてLINE-1のメチル化を調べたところ、80%程度のメチル化が検出された。この値はすでに報告されている値に近く、LINE-1のメチル化測定条件が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コホートの母児の情報を分析するのに時間を要した。それにより、当初の研究計画を変更して新たな対応策を考え、準備し、解析を開始するのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮内発育遅延児と健常児の臍帯血DNAにおけるLINE-1のメチル化状態を比較することにより、子宮内胎児発育遅延にゲノムのエピジェネティックな変化が関与している可能性の有無が明らかになる。エピジェネティックな変化が関与している場合は、次に、胎児の発育に関与する遺伝子群(IGF-1,2など)についてプロモーター領域のメチル化状態の変化、蛋白質量の変動の有無を明らかにし、低出生体重が生じるメカニズムの一端を明らかにすることを試みる。
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