2012 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質によるエピジェネティクス変化と次世代影響の解明
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23390157
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安住 薫 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (90221720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 玲子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任教授 (80112449)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境化学物質 / 環境疫学 / 前向きコホート / エピジェネティクス / DNAメチル化 / IGF2/H19 / LINE-1 / 低出生体重 |
Research Abstract |
1)「前向き出生コホート(母児514組)」における臍帯血DNAの抽出:北海道スタディ小コホート(母児514組)のうち、臍帯血サンプルが採取・保管されていた268児について、核酸抽出機(プロメガ社)を用いて臍帯血からDNAを抽出した。また、抽出したDNAの一部を用い、メチル化解析用にバイサルファイト処理を行った。 (2)パイロシーケンサーを用いたIGF2遺伝子 DNAメチル化測定条件の確立:キアゲン社のパーロシーケンサー (PyroMark)を用いて、IGF2 (Insulin-like growth factor-2)のDNAメチル化状態を測定する条件を確立した。 (3)「前向き出生コホート」臍帯血DNAを用いたIGF2遺伝子およびLINE1領域メチル化の測定:上記で決定した測定条件の下で、児268名分の臍帯血DNAのIGF2メチル化を測定した。また、H23年度に決定した測定条件の下で、LINE1のDNAメチル化を測定した。この集団における、各領域のDNAメチル化率の平均(%)は、IGF2が48.7% (±2.9)、LINE1が76.4% (±1.1)であった。 (4)胎児期の化学物質曝露による児のDNAへの影響の評価(統計解析):測定したIGF2、LINE1DNAメチル化率を従属変数に、妊娠中喫煙の有無、及び母体血中ダイオキシン(TEQ)・PFOS/PFOA・MEHP濃度、母毛髪水銀量をそれぞれ独立変数にとり、母年齢・年収・在胎週数・児性別・(喫煙曝露以外は加えて妊娠中喫煙、水銀曝露はさらにパーマ歴)を共変量として加え、重回帰分析を行った。その結果、母体血中PFOA濃度(log10)とIGF2メチル化(%)との間に負の相関(β=-1.5, p=0.04)が、母毛髪中水銀量(log10)とLINE1メチル化(%)との間に正の相関(β=0.8, p=0.02)が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コホートの母児の情報を分析するのに時間を要した。それにより、当初の研究計画を変更して新たな対応策を考え、準備し、解析を開始するのに時間を要した。 また、本研究室においての臍帯血DNA抽出・パイロシーケンサーを用いたDNAメチル化定量は初の試みであったため、測定系の立ち上げ、確立に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
児臍帯血の胎児発育関連遺伝子IGF2、ゲノム全体のメチル化の指標となるLINE1について、環境化学物質曝露(ダイオキシン、PCB、PFOS/PFOAなど)および喫煙曝露によるDNAメチル化への影響を、重回帰分析など統計学的手法を用いて現在検討中である。今後はIGF2の発現を調節しているH19 DMR領域のメチル化についてパイロシーケンサーで測定し、胎児期の環境化学物質曝露がDNAメチル化に与える影響について検討する。さらに、曝露によって観察されるIGF2/H19、LINE1メチル化の変動が低出生体重やその後の児の健康状態(肥満・小児糖尿病など)に与える影響について統計学的手法を用いて検討し、環境化学物質の胎児期曝露が出生体重など児の健康に負の影響を及ぼすメカニズムの一端を明らかにすることを試みる。
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Research Products
(2 results)