2012 Fiscal Year Annual Research Report
職業性吸入インジウムの体内動態と多臓器障害に関する研究
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23390164
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 昭代 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10136484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 美由紀 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30156674)
小椋 康光 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (40292677)
古閑 一憲 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (90315127)
米本 孝二 久留米大学, 付置研究所, 講師 (90398090)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 社会医学 / 産業衛生 / インジウム / 発がん性 / 間質性肺炎 |
Research Abstract |
【はじめに】水酸化インジウムはITOターゲット材のリサイクル工程で生成され、生体影響に関する知見は非常に乏しい。今回、難溶性である水酸化インジウムをラットの気管内に反復投与を行い、肺を中心とした長期生体影響について評価した。 【方法】実験群は2群設定し水酸化インジウム(In(OH)3)群および対照群である。実験動物として雄性Wistar ラットを用いた。In(OH)3の1回投与量は1mg In/kgであり、対照群には蒸留水のみを1 ml/kg 投与し、2週間の間に3回投与を行った。最終投与日から1、2、4、12、24、48、72週目の7時点でIn(OH)3群および対照群ともに各5匹ずつ(72週時ではIn(OH)3群11匹、対照群12匹)経時的に安楽死させ、評価を行った。体重変化、相対肺重量、血清インジウム濃度、肺の病理変化より生体影響について評価を行った。 【結果および考察】体重推移に関し、In(OH)3群は対照群と同様の推移を示したが、各時点のIn(OH)3群の相対肺重量は対照群と比べて有意に上昇した。血清インジウム濃度はIn(OH)3群では1週目から4週目までほぼ横ばいで推移し、12週から48週まで経時的に増加したが、72週目では減少した。肝臓、腎臓、脾臓中のインジウム濃度は経時的に増加した。しかし、尿中のインジウム1日排泄量は経時的に低下した。肺の病理学的評価に関し、In(OH)3群では1週目より肺胞マクロファージの遊出、肺胞内のエオジン好性の浸出物の貯留、肺胞上皮細胞の増生等の炎症性変化を主体とする病変が観察され、これらの病変は72週まで経時的に進展した。一方、対照群では肺に著変は観察されなかった。 難溶性であるIn(OH)3をラットの気管内に投与した場合、肺障害は長期にわたって持続し、In(OH)3の肺クリアランスは遅いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度実施計画で提示した水酸化インジウムの慢性実験を実施し、①肺障害の程度の評価、②肺、肝臓、腎臓、脾臓、血清、全血、尿中のインジウム濃度の測定によるインジウムの体内動態評価を行い、インジウムの臓器蓄積性が高いことが明らかになり、当初の研究目的を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで、インジウム化合物の気管内投与による肺障害とインジウムの体内動態について評価を行ってきた。肺障害の程度は病理学的に評価してきたが、今後はヒトでの職業性曝露による間質性肺炎マーカーであるサーファクタントプロテインD等との比較検討するために血清中の肺障害のマーカーについて検索する。さらに、投与部位である肺以外の遠隔臓器における臓器障害の程度を病理学的に評価し、多臓器障害について包括的に健康影響評価を行う。
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Research Products
(13 results)