2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄由来細胞の機能改変による癌幹細胞特異的nicheを標的とした膵癌治療法の開発
Project/Area Number |
23390194
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下瀬川 徹 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90226275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 賢一 宮城県立がんセンター, 臨床研究室, 室長 (10282055)
正宗 淳 東北大学, 病院, 助教 (90312579)
濱田 晋 東北大学, 病院, 医員 (20451560)
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Keywords | microRNA / EMT / 膵癌 |
Research Abstract |
本年度は膵癌における癌幹細胞機能の維持に寄与する癌細胞と間質の相互作用、間質細胞により形成される微小環境の詳細な機能について検討するため、以下の検討を行った。 1)豊富な間質細胞によりもたらされる癌細胞内の環境の変化について、浸潤性膵癌とIPMA、IPMC組織のマイクロRNA発現プロファイルの比較を行った。その結果、IPMA、IPMCに比べて浸潤性膵癌において特異的に発現低下がみられるmiR-126の標的遺伝子であるADAM9が浸潤性膵癌特異的に発現していることが確認された。対照的に、浸潤性膵癌特異的に発現上昇がみられるmiR-197については膵癌細胞株に上皮間葉形質転換(EMT)を惹起する能力が確認され、浸潤性に寄与する可能性が示唆された。以上の結果からADAM9は治療用エフェクター細胞の標的分子として有望であり、miR-197の抑制と併用することで治療効果の向上が期待できるものと考えられる。 2)間質細胞と癌細胞の相互作用をin vitroで評価するため、間質細胞との接触条件下での培養の後、セルソーターにて分離を容易にするためにGFPで標識した膵癌細胞株を作成した。ヒト膵癌細胞株Panc-lにGFP発現プラスミドを導入し、安定発現細胞株を作成。GFP蛍光による良好な分離を確認した。 3)間葉系幹細胞と癌細胞との共培養系を樹立するための予備実験として、膵星細胞との共培養による癌細胞側の遺伝子発現変化を確認した。既報にて膵星細胞との共培養で発現上昇がみられるEMT関連転写因子、Snailとともに癌幹細胞機能との関連が報告されている複数の遺伝子の発現が上昇していることが確認された。 以上の結果は癌幹細胞を標的とする治療用エフェクター細胞の作製と治療応用に向けた基礎データとして有望であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は膵癌細胞の特異的なマーカーとしてADAM9が同定され、癌幹細胞機能の主要な機能である転移能に関与するmiR-197も同定された。これらの分子を今後治療用エフェクター細胞の作製へ応用する予定であり、次年度以降間質細胞と膵癌細胞の共培養系を用いて詳細な機能の解析を予定しているため、進捗状況はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では膵癌細胞特異的に発現するマーカーの候補となる分子が同定され始めており、膵癌幹細胞の機能を制御する分子の同定と機能解析が先行している状態である。これらの分子を利用した治療用エフェクター細胞の試作を進めながら、発癌モデル動物を用いた新規治療標的分子のスクリーニングを行うことで効率的に計画を進められると考えられる。治療用エフェクター細胞の試作に際しては遺伝子導入が比較的容易な不死化ヒト膵星細胞株を用いることも検討し、候補となる遺伝子の迅速な選別を進める予定である。
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