2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌の発生と進展におけるオートファジーの意義と制御機構の解析
Project/Area Number |
23390197
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70335355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巽 智秀 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20397699)
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Keywords | オートファジー / アポトーシス / ソラフェニブ / 肝細胞癌 / Atg-7 / Mcl-1 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
オートファジーは細胞内蛋白やオルガネラの分解システムであり、細胞の生存や死に直結した生命現象である。しかし、肝癌におけるオートファジーの実態とその意義については十分に理解されていない。本研究課題では、肝細胞癌の発生と進展におけるオートファジーの意義とその制御機構を基礎的かつ臨床的に明らかにすることを目的に研究を行う。肝細胞癌切除例の癌部、非癌部を用いてオートファジー関連分子の発現を解析したところ、癌部において非癌部に比しLC3-IIの発現が増強している症例があり、肝細胞癌の少なくとも一部の症例ではオートファジーが亢進していることが明らかとなった。肝癌細胞株はソラフェニブの投与によりオートファジーが亢進したが、Atg7 siRNAによりオートファジーを阻害すると、肝癌細胞株のアポトーシスが亢進した。ヌードマウスの皮下に肝癌細胞のゼノグラフトモデルを作成し、ソラフェニブを投与すると、腫瘍部でオートファジーが誘導されたが、このオートファジーをクロロキンを用いて阻害すると、ソラフェニブによる抗腫瘍効果が有意に増強した。肝細胞特異的にMcl-1をノックアウトしたマウスでは、肝細胞アポトーシスが持続し、1年齢以上になると肝癌が発生する。このメカニズムを解明するために、発癌に至る前の背景肝の解析を行ったところ、炎症性サイトカインの発現上昇と酸化ストレスの増強が認められた。さらにLC3-IIの蓄積が認められことから、アポトーシスの持続による肝発癌にオートファジーが関与している可能性が示唆された。以上より、ヒト肝癌ではオートファジーが増強している症例があり、抗癌剤によるオートファジー誘導は薬剤抵抗性を付与することが明らかとなった。一方で、アポトーシスを基盤とした発癌過程においてもオートファジーが出現しており、発癌とオートファジーにもなんらかの関連があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト肝癌試料におけるオートファジーの存在が証明され、抗癌剤によるオートファジー誘導の機能的な意義が解明された。さらに、アポトーシスを基盤とした肝発癌モデルにおいてオートファジーが出現することを、遺伝子改変マウスを用いて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
肝細胞アポトーシスの持続による肝発癌過程において出現するオートファジーの意義を解明する必要がある。
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Research Products
(5 results)