2012 Fiscal Year Annual Research Report
難治性コモン不整脈における遺伝子ー環境因子相互作用:GWASデータに基づく検討
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23390205
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
古川 哲史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80251552)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 不整脈 / 心房細動 / 突然死 / 遺伝子 |
Research Abstract |
<心房細動に関する検討> 心房細動に関連する遺伝子で、遺伝-環境因子相互作用の検討を行った。当初の予定の2の遺伝子から増えて3遺伝子の検討を行った。そのうち、1つの遺伝子では炎症シグナルとクロストークすることが示唆され、1つの遺伝子は酸化ストレスシグナルとクロストークすることが示唆された。前者では、遺伝子多型が炎症関連遺伝子の3’UTRに存在し、マイクロRNAの結合を変化させる可能性が示唆された。 <心室細動/突然死に関する検討> 突然死に関してはGWASにより同定されたNOS1APのKOマウス、および候補遺伝子アプローチとしてIrx3 KOマウスの解析を行った。NOS1APの解析では、コントロール状態ではQTc間隔に野生型マウスとKOマウスで差を認めなかったが、ドキソルビシンや圧負荷でKOマウスでQTcの有意な延長を認めた。このメカニズムとして酸化ストレスの関与が示唆された。Irx3は、突然死に関与することが示唆されているHis-Purkinje系特異的に発現する転写調節因子である。Irx3のKOで、心室内伝導障害と運動時に特に増加する不整脈の発生が認められた。His-Purkinje系で複数のイオン輸送体の発現が制御されることがその原因と考えられた。次に人でも同様にIrx3の遺伝子異常が突然死に関与するか、特発性心室細動患者でIrx3の遺伝子検索を行った。5名の患者で2つの遺伝子変異と1つの遺伝子多型を同定した。2つの遺伝子変異は特発性心室細動家系で同定され、1つの遺伝子多型は3名の特発性心室細動の散発例で同定された。これらの遺伝子変異は250人の日本人コントロールでは同定されず、遺伝子多型は250人中1名に認めるだけだった。これらの遺伝子変化の機能解析を行ったが、前記のイオン輸送体の発現を変化させることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心房細動の遺伝-環境因子相互作用の検討では、当初2つの遺伝子の検討を行うことを予定していたが、予定より1つ増えて3つの遺伝子に関して検討を行うことができた。中でも、炎症シグナルとの相互作用が示唆された遺伝子では、炎症関連分子をコードする遺伝子の3’UTRに心房細動と関連する遺伝子多型が存在し、同部位には炎症に関連するマイクロRNAが結合することが知られているので、このクロストークのメカニズムとして当初想定していなかったマイクロRNAの関与まで明らかにすることができ、予定していた上の成果を上げることができた。 心室細動/突然死の検討では、突然死との関連性が強く示唆されているHis-Purkinje系特異的に発現する転写調節因子Irx3のKOマウスで運動誘発性心室性不整脈が惹起されることから、同遺伝子異常のヒトでの探索を行った。その結果、ヒトでも同遺伝子異常が運動と関連する突然死と関連することが明らかとなった。当初予定していなかったヒトでの解析に展開することができ、ヒトで初めてHis-Purkinje系と突然死の遺伝的関連性を明らかにすることができた。また、心臓に特別異常を認めないヒトでも運動により約0.5%の頻度で突然死が起こることが知られている。Irx3がその遺伝的リスクの1つとなることを世界で初めて明らかにすることができた。以上より、当初予定していた以上の成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
心房細動では、6つのlocusが日本人の心房細動と関連することが同定された(Nat. Genet. 2012;)。これらすべてのKOマウスに取り掛かっており、作成できたものから解析を開始する。また、これらの遺伝的リスクを有する人からのiPS細胞由来心筋細胞は機能解析を行う上で極めて有効となることが示唆される。そこで、当初の予定をさらに発展させて、心房細動リスク患者のiPS細胞由来心筋細胞の作成にも可能なら取り掛かりたい。 心房細動では、機能解析からマイクロRNAの関与が示唆された。マイクロRNAは、近年前駆体として血液中に放出されターゲット細胞に取り込まれプロセシングを受け効果を発揮すること明らかとなった。そこで、マイクロRNAは心房細動の発症リスク・病気進展のバイオマーカーとなること示唆される。そこで、末梢血液・心臓腔内血液・開心術後心嚢水を採取し、候補マイクロRNAがRT-PCRで測定可能であるか、測定可能であれば心房細動発症や病気とどのような関連性にあるか検討する。 心室細動に関しては、Irx3の遺伝子異常が特に運動と関連性がある突然死に関連することを日本人患者で明らかにすることができた。これが日本人に特異的なものでないことを確認するために、昨年から共同研究を始めたAmsterdam大学Bezzina教授・Wilde教授の研究室の欧米人のサンプルを使って解析を行う。さらに、心不全では今までに2つの染色体座しか関連性が同定されていないが、そのうち特に関連性の高かったCLCKNAについて新たに検討を開始した。CLCKNAは腎臓特異的に発現する陰イオンチャネルであることから、心腎連関で重要な役割を果たすことが示唆される。そこで、CLCKNAのKOマウスを使って心不全との関連の機能解析を行う。
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Research Products
(28 results)
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[Presentation] 炎症と不整脈2012
Author(s)
古川哲史
Organizer
第29回日本心電学会学術集会
Place of Presentation
千葉
Year and Date
20121011-20121013
Invited
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