2011 Fiscal Year Annual Research Report
造血因子の脳軟膜側副血行促進機序の解明-脳梗塞亜急性期への臨床応用を目指して-
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23390234
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北川 一夫 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70301257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木田 佳樹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20403066)
佐々木 勉 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (20534879)
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Keywords | 脳虚血 / 側副血行 / 造血因子 / 脳血流 |
Research Abstract |
脳梗塞の原因は脳血管閉塞であるが、脳主幹動脈閉塞に際する虚血重症度を規定する最大の要因は、ウイリス動脈輪、脳軟膜動脈吻合での脳側副血行発達の良否である。申請者はこれまで、慢性低灌流に対する脳血管の適応現象として脳軟膜動脈吻合での側副血行路発達(Arteriogenesis)が誘導され、主幹動脈閉塞に際する虚血重症度を著しく軽減する事、造血因子投与がArteriogenesisを促進しうる事を報告してきた。本研究では、造血因子の脳血管での側副血行発達の分子機序と側副血行発達への脳血管内皮機能の関与を解明し、虚血性脳血管障害に対して脳血行動態改善を標的とした造血因子の臨床応用に結びつける事を目的としている。 本年度はマウス総頸動脈閉塞による慢性脳低灌流モデルを用いて、各種造血因子の中で顆粒球・単核球系の細胞動員可能な因子GM-CSF、G-CSF、M-CSFおよびその組み合わせの脳軟膜動脈側副血行発達促進効果を比較検討し、GM-CSFと同等もしくはより有効性の高い造血因子を選択することとした。その結果、G-CSFはGM-CSFと同様にマウス一側総頸動脈閉塞後の側副血行発達促進効果を発揮することが明らかになった。一方M-CSF投与でははこのような作用は観察されなかった。 つぎに他の動物種でもG-CSFに同様な脳軟膜動脈吻合促進効果が観察されるか否かをWistarラットを用いて検討した。また脳血管内皮機能低モデルとして高血圧自然発症ラットも実験に供した。G-CSF投与は正常血圧ラットでは一側総頸動脈閉塞後の脳軟膜表面でのarteriogenesisを促進したが、SHRではG-CSF投与群でも側副血行発達促進効果は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GM-CSFは臨床試験で安全性に問題があるため、脳側副血行発達を目的とした臨床応用の展望は厳しい。それに反してG-CSFはすでに臨床でも白血球減少症に広く応用されており臨床応用可能と考えられ、本年度はG-CSFにも脳軟膜動脈吻合促進効果が観察されることがラットマウスで示された点に意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
G-CSFの脳軟膜動脈吻合促進効果は血管内皮機能が正常に保たれている動物ではラットマウスを問わず観察されるが、脳血管内皮機能が低下している動物SHRではその効果がみられないことはヒト脳梗塞症例では多くの場合高血圧など多くの危険因子を有し内皮機能低下の存在が推察される。脳血管内皮機能改善を期待できる薬剤を併用することによりG-CSFの効果がSHRや他の血管内皮機能低下モデルでも発揮できるようにしていきたい。
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