2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合体解析を駆使したインスリン抵抗性と慢性炎症の分子メカニズム解明
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23390242
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅野 知一郎 広島大学, その他の研究科, 教授 (70242063)
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Keywords | インスリン抵抗性 / 細胞内シグナル伝達 / 代謝調節 |
Research Abstract |
我々は、インスリン抵抗性や慢性炎症の機序に重要なタンパクについて、免疫沈降用タグを取り付けたbaitを含むタンパク複合体を調整し、LC-MS/MSを基盤とするタンパク質の超高感度同定システムを用いて、結合蛋白を網羅的に同定する。これから、重要性が推測されるタンパクを絞り込み、機能解析を培養細胞のみならず、臓器特異的KOマウスを用いて進め、新規な代謝調節や炎症惹起のメカニズムの発見につなげる。また、複合体形成プロファイリングを進め、データベース化を進め、代謝異常への関与を統合的に理解する。 一方、我々が新規に報告した慢性炎症機構については、糖尿病や肥満モデルマウスの臓器におけるIBと、p50、p65、b-TrCPやhnRNP-U間の複合体形成を検討する。細胞レベルではFRETのシステムで経時的に検出するシステムを構築し、新規の抗炎症薬剤のターゲットとなる可能性を探りたい。 具体的には、I. インスリン作用や炎症系シグナルに重要な蛋白の修飾や結合蛋白の同定 II.既に同定された新規タンパク複合体の生理的作用と病態と関連の同定 我々は、昨年度までにも上記の実験からの成果として、既に多数の重要な複合体形成を見出している。これらについては、生理作用と病態への関与の両面から検討する。 IIIグルコーストランスポーターGLUT4/1含有特異的小胞の構成タンパクの網羅的同定及び機能の解析
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インスリン作用や炎症系シグナルに重要な蛋白の修飾や結合蛋白の同定に関しては、baitに免疫沈降特異的なタグを取り付けたタンパクを過剰発現させたのち、免疫沈降から質量分析装置による同定を行った。また、これらのタンパクの発現量やbaitとの結合量が糖尿病や肥満マウスモデルにおいてどのように変化するかについて検討を行った。さらに、同定されたタンパクの中でPin1やPAR14がIRS-1に結合し、インスリン感受性を上昇させることを見出した。一方、Pin1結合タンパクとして同定されたTrk-fused gene (Tfg)が肥満状態において発現量が顕著に減少することや、アデノウイルスを用いてマウス肝臓に発現させると血糖降下作用を呈することも見出した。そこで、これらが、糖・脂質代謝に重要な役割を果たしていることが新規に明らかとなった。一方、グルコーストランスポーターGLUT4/1含有特異的小胞の構成タンパクの網羅的同定については多数のタンパクが同定されたが、機能上、新規に重要と認められるタンパクは明らかでなく、さらに検討が必要な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究から、Pin1、PAR14、Trk-fused gene (Tfg)が糖・脂質代謝調節に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。そこで、臓器ごとの役割を詳細に検討するために、理化学研究所とこれらの臓器特異的KOマウスの作成に取り掛かることになった。今後、このマウスの作成を行うと共に、細胞レベルでの機能解析も進めていく予定である。また、複合体解析も継続して行ない、インスリン抵抗性や慢性炎症の機序に重要な新規タンパクの発見にも努力していく予定である。
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Research Products
(10 results)