2012 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞の骨髄ニッチ脱着を制御する新規分子群の役割
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23390256
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
原 孝彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 副参事研究員 (80280949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北島 健二 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (10346132)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / 骨髄ニッチ / ES細胞分化 / CXCL14 / CXCL12 / CMG-1 / Lhx2 |
Research Abstract |
CXCL12は、造血幹細胞の骨髄ニッチ定着に必須の役割を果たす。我々は最近、近縁のケモカインCXCL14がCXCL12のnatural inhibitorであることを発見した。骨髄ニッチ近傍におけるCXCL14の発現場所を明らかにする目的で、CXCL14遺伝子座にTdTomato遺伝子を挿入したBACトランスジェニックマウス系統を樹立した。遺伝子発現に影響を与えるPGK-Neoカセットを遺伝的に除去し、発現解析用マウスの繁殖を進めている。 次に、1型コラーゲン受容体の発現を制御するCMG-1遺伝子の骨髄ニッチにおける機能を明らかにする目的で、CMG-1-floxedマウス系統を樹立した。Tie2-Creトランスジェニックマウスとの交配によって、胎生期造血幹細胞特異的なコンディショナルKOマウスが完成した。これらのマウスはメンデルの法則通りに生まれ、外見上の異常は観察されなかった。現在、成獣骨髄内における造血幹細胞の局在場所や絶対数に違いがないかどうか、解析を行っている。 最後に、昨年度樹立したA2Lox-iLhx2 ES細胞株を用いて、Dox添加によってES細胞から造血幹細胞様細胞を体外増幅できる培養系を構築した。この系では、Doxを抜くと急速にLineage分化が始まることから、Lhx2タンパク質は造血幹細胞様細胞の維持と増幅に必須である。Lhx2相互作用分子の探索とLhx2誘導遺伝子の網羅的解析を行った結果、1)Lhx2の過剰発現はLmo2タンパク質の分解を促進すること、2)Lhx2はGata3 mRNAを発現誘導し、これがLineage分化の抑制に必須であることを見出した。Lhx2は複数のエフェクターを介して造血幹細胞特異的な遺伝的プログラムを発動させているものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つのサブテーマの内、A2lox-iLhx2 ES細胞株を利用した造血幹細胞の遺伝子プログラムの解析が大きく進展した。2番目のテーマについては、CMG-1遺伝子のコンディショナルKOマウスが完成したので、最終年度の表現型解析によって骨髄ニッチ定着におけるこの分子の機能を解明できると期待される。1番目のテーマは、以前記述的なステージにあるが、本研究で作出したBACレポーターマウスを用いて、CXCL14とCXCL12との空間的位置関係について確固たる結論を導き出したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下のような手順にて研究を進める。 1. BAC CXCL14-TdTomatoトランスジェニックマウス系統を用いて、骨髄ニッチ近傍におけるCXCL14産生細胞とCXCL12産生細胞との空間的位置関係を、蛍光観察とin situ hybridizationによって詳しく解析する。 2. CMG-1-floxed:Tie2-Creマウスの骨髄における造血幹細胞の存在比率や分化能について、FACSやコロニーアッセイを用いて解析する。次に、CMG-1 CKOマウスの全骨髄細胞を放射線照射したCD45.1マウスに移植して、短期・長期骨髄再建能を野生型マウスの場合と比較解析する。有意な異常が観察された場合には、骨髄ホーミング能と1型コラーゲン基質に対する接着性についても調べる。 3. A2Lox-iLhx2 ES細胞を用いて同定したLhx2 の下流エフェクター遺伝子群のcDNAを、A2Lox ES細胞にひとつずつ導入していく。A2Lox-iLhx2 ES細胞の場合と同様に、Dox依存的に造血幹細胞が体外増幅されるかどうか、FACS解析によって検証する。また、Lhx2の下流遺伝子に対するsiRNAをA2Lox-iLhx2 ES細胞に安定発現させる。このときDox依存的な造血幹細胞の体外増幅がキャンセルされるかどうか、FACS解析によって判定する。
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Research Products
(7 results)