2012 Fiscal Year Annual Research Report
マウスモデルを用いたエイズ合併クリプトコックス症の内因性再燃発症に関する研究
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23390263
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 和義 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10253973)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | クリプトコックス / 免疫記憶 / メモリーT細胞 / エイズ / 内因性再燃 / マンノプロテイン / 自然免疫 |
Research Abstract |
クリプトコックスはエイズの重要な日和見病原真菌であり、重篤な髄膜脳炎を引き起こす。近年、クリプトコックス症は免疫低下による内因性再燃として発症すると考えられており、その病態解明のためにマウスの持続感染モデルを用いてメモリーT(Tm)細胞の動態を解析した。本モデルでは、肺内生菌数が感染後徐々に減少するものの、7ヶ月後でも500CFU/マウス程度で感染が持続した。このマウスにデキサメサゾンを投与すると、有意に菌数が増加し感染の再燃が観察された。肺内のTm細胞は感染3日後でCD4+、CD8+ともに増加し、7日後には一旦減少したが、その後1ヶ月にかけて再び増加を示した。傍気管リンパ節では7日後でピークとなり、その後減少するものの一定数が維持された。肺内のIFN-γ+Tm細胞は3~7日後でピークを示し、その後徐々に減少した。感染7ヶ月後のデキサメサゾン投与では、CD4+、CD8+Tm細胞ともにIFN-γの発現が減少したことから、内因性再燃への関与が示唆された。一方で、感染3日後にIFN-γ+Tm細胞が増加することを見出したが、これは末梢血から肺への集積によること、Cタイプレクチン受容体のシグナル伝達に重要なCARD9やI型インターフェロンがその制御に関わること、CCL4、CCL5のようなケモカインがその集積に関与する可能性があることを明らかにした。これらの解析は細胞表面マーカーのみでTm細胞の同定を行ったことから、必ずしも抗原特異的なTm細胞を検出しているとはいえない。そこで、本真菌の主要なT細胞抗原であるMP98に特異的な受容体(TCR)を発現したトランスジェニックマウスの作製を試み、TCRα鎖、β鎖遺伝子を有するマウスが得られた。次年度は、このマウスを用いることで、クリプトコックス感染後のMP98特異的な免疫記憶応答と、内因性再燃における意義について解析を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クリプトコックス感染後の抗原非特異的なメモリーT細胞応答については、感染7ヶ月と長期的な解析を実施することができ、デキサメサゾン投与による免疫不全時の内因性再燃におけるメモリーT細胞への影響についても明らかにすることができた。しかしながら、本研究の最終的な目的のためにはクリプトコックス抗原特異的な免疫記憶応答の解析が必要であり、そのために抗原特異的なT細胞受容体遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作製することが重要となる。予定では、完成したマウスを用いた解析を開始することになっていたが、作製段階で遅れが生じたため当該年度中に開始できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、クリプトコックス抗原特異的なT細胞受容体のα鎖及びβ鎖を有するマウスを得ており、トランスジェニックマウスの完成を急ぐ。完成次第持続感染と内因性再燃時の免疫記憶応答への影響についての解析を開始する。併せて、抗原特異的T細胞を検出するためのプローブとしてT細胞受容体のクロノタイプ特異的単クローン抗体の作製を開始しており、そちらの完成も急ぎたい。
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