2012 Fiscal Year Annual Research Report
DNA損傷応答機構を中心とした発がん制御機構の解析と、その応用による治療法の開発
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23390271
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
水谷 修紀 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60126175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 正稔 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (10406267)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | DNA損傷応答 |
Research Abstract |
ゲノム安定性にかかわる遺伝子の異常は細胞のがん化に深く関与している。近年の研究から正常細胞が腫瘍化する段階で細胞増殖シグナルが活性化されるため、過度のDNA複製要求が起こりそのためDNA損傷応答機構が活性化され、発がんのバリアとして働いていることが明らかとなった。慢性骨髄性白血病(CML)の原因であるBCR-ABLキメラタンパク質は細胞増殖を促進する、チロシンキナーゼである。BCR-ABLによる細胞増殖の促進がDNA損傷応答機構の活性化につながるか慢性骨CML慢性期の骨髄と正常骨髄を用いDNA損傷応答の活性化をATMのリン酸化を指標として免疫組織染色法を用いて検討を行った。その結果、CML慢性期の骨髄ではATMのリン酸化が認められ、DNA損傷応答の活性化が起こっていることが示唆された。また細胞株を用いた実験でもBCR-ABLの発現によりDNA損傷応答経路が活性化され、さらに放射線照射によるDNA損傷によって、過剰のDNA損傷応答の活性化起こることが明らかとなった。CMLは数年の慢性期の後、急性転化を起こし、この急性転化にはがん抑制遺伝子p53の変異の獲得やp16INK4Aの失活、分化に必要なIKZF1の欠失などが関与していることが知られているが、そのすべては明らかにはなっていない。そこでDNA損傷応答機構が活性化による発がんのバリアの破綻が急性転化にどの様な影響を及ぼすか、CMLのモデルマウスであるBCR-ABLトランスジェニックマウスとDNA損傷応答機構の障害を持つATM欠損マウスを交配し、検討した。その結果ATM欠損がハプロに起こるだけでCMLの急性転化が促進されることが明らかとなった。このことからCMLの慢性期の維持にDNA損傷応答機構が重要な役割を持ち、発がんのバリアとして機能して働いていることが明らかとなった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA損傷応答が急性骨髄性白血病発症に深くかかわったことを明らかにできた点、Tリンパ球細胞分化においてATMが染色体転座発症にかかわっていることを明らかにできた点で、血液腫瘍分野における、研究は十分進歩がみられた。しかし神経芽腫におけるDNA損傷応答機構の解析はまだ進行途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA損傷応答にかかわり生体防御システムとして働くDNA損傷修復に着目して、合成致死により細胞死を誘導する治療法の開発を慢性骨髄性白血病を中心に行う。また神経芽腫におけるDNA損傷応答機構の解析を引き続き継続する。
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[Journal Article] Process for immune defect and chromosomal translocation during early thymocyte development lacking ATM2012
Author(s)
Isoda T, Takagi M, Piao J, Nakagama S, Sato M, Masuda K, Ikawa T, Azuma M, Morio T, Kawamoto H, Mizutani S
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Journal Title
Blood
Volume: 120(4)
Pages: 789-799
DOI
Peer Reviewed
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