2012 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症の病態発生因子としてのミクログリアの機能解析
Project/Area Number |
23390289
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐藤 康二 浜松医科大学, 医学部, 教授 (80235340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 則夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00174376)
松崎 秀夫 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (00334970)
植木 孝俊 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (60317328)
中村 和彦 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80263911)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミクログリア / 神経回路 |
Research Abstract |
1. ミクログリアの活性化を誘引する炎症性因子の探索を行った。当該培養系ではミクログリアが特異的にEGFPを発現しているので、炎症反応の初段階におけるカスパーゼ1の賦活と、それに続くIL-1β産生に伴う蛍光機能プローブからの蛍光を検出した直後に、laser capture microdissection (LCM)によりミクログリアを分離し、DNAマイクロアレイを用いて、ミクログリアでの遺伝子発現変化を解析した。続いて、DNAマイクロアレイでの解析結果に基づき、ミクログリアの活性化を誘引する炎症性因子の探索を行い、多くの候補遺伝子を得た。 2. ミクログリア活性化の神経活動依存性の電気生理学的基盤の解明として、申請者らの統合失調症患者でのPETによるミクログリアの脳内動態解析の結果、顕著なミクログリアの活性化を認めた内側前頭前野等の脳領域について、EGFP-Schiマウスの脳スライスで、電子顕微鏡による形態学的解析とパッチクランプ法による神経回路解析を行った。また、ミクログリア近傍の局所神経回路を刺激あるいは抑制することによる活性性化ミクログリアの挙動変化を、脳スライスで蛍光顕微鏡下に解析を行った。それにより、当該脳領域における活性化ミクログリア・ニューロン相関の形態学的基礎と、ミクログリア活性化の神経活動依存性の電気生理学的基盤をあきらかとすることができた。 3. 成熟EGFP-Schiマウスにおいて、ミクログリアの活性化を惹起する脳内因子の探索を行い、このモデルの特異的な神経活動の賦活あるいは抑制が、ミクログリアを活性化する仕組みを解明した。さらに、それらのin vivo解析によりミクログリアの活性化や神経活動の変動等との関連が示唆された脳内因子を分子標的とする、統合失調症の早期診断及び治療のための基礎的な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期計画に基づき、本年度は、ミクログリアの活性化を誘引する炎症性因子の探索を行い、ミクログリアでの遺伝子発現変化を解析した。続いて、その結果に基づき、ミクログリアの活性化を誘引する炎症性因子の探索を行い、多くの候補遺伝子を得た。また、統合失調症患者でのPETによるミクログリアの脳内動態解析の結果、顕著なミクログリアの活性化を認めた内側前頭前野等の脳領域について、EGFP-Schiマウスの脳スライスで、電子顕微鏡による形態学的解析とパッチクランプ法による神経回路解析を行い、また、ミクログリア近傍の局所神経回路を刺激あるいは抑制することによる活性性化ミクログリアの挙動変化を、当該脳領域における活性化ミクログリア・ニューロン相関の形態学的基礎と、ミクログリア活性化の神経活動依存性の電気生理学的基盤をあきらかとすることができた。また、成熟EGFP-Schiマウスにおいて、ミクログリアの活性化を惹起する脳内因子の探索を行い、このモデルの特異的な神経活動の賦活あるいは抑制が、ミクログリアを活性化する仕組みを解明した。さらに、それらのin vivo解析によりミクログリアの活性化や神経活動の変動等との関連が示唆された脳内因子を分子標的とする、統合失調症の早期診断及び治療のための基礎的な知見を得た。以上の事より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下の様に実験を推進して行く予定である。 1. 統合失調 症患者脳での[11C]PK11195への高い結合性を持つ領域と、微弱な結合性のみ呈する領域について、 EGFP-Schiマ ウスの各々の相当領域から、LCMによりミクログリアの周囲組織を分離し、DNAマイクロアレイを用い二つの領域 での遺伝子発現パターンを比較解析する。それによって、活性化ミクログリアの周囲組織で特異的に発現が亢進 している遺伝子を同定し、その遺伝子のコードするタンパク質を、EGFP-Schiマウスで阻害あるいは賦活し、成熟マウスでみられるPPIの障害やメタンメタンフェタミンへの反応性がどのように修飾されるかを検討する。 2. 二重遺伝子改変マウスの作成とより詳細な検討 ニューロン特異的に赤色蛍光タンパク質を発現するNSE-RFPマウスとIbaI-EGFPマウスを交配し作製した二重遺伝 子改変マウスの胎仔に、poly(I:C)を感染させた統合失調症マウスモデル(NSE-RFP/IbaI-EGFP・Schiマウス)を用 い、二光子励起レーザ走査型顕微鏡により樹状突起スパイン形成・発達と活性化ミクログリアの関連を評価する 。そして著明なミクログリアの活性化を認める内側前頭前野等の当該マウス脳領域で、ミクログリアが隣接する 神経線維の活動電位をin vivoパッチクランプ記録法により計測しながら、ミクログリアの形態変化をリアルタ イムで二光子励起レーザ走査型顕微鏡を用いて解析する。これにより、ミクログリアの活性化に近接神経の神経 活動が及ぼす影響を電気生理学的に生体脳で検討する。本研究では、さらに、先に探索したミクログリアの活性化に関 与する炎症性因子が、神経活動や、それへの近接ミクログリアの応答性に及ぼす影響についても、in vivoで電気生理学的に検討する。
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