2011 Fiscal Year Annual Research Report
S1P・ヒアルロン酸修飾リポソームを用いた難治性肝障害に対する新規治療薬の開発
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23390319
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大河内 信弘 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40213673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 潔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20361339)
小林 昭彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10446552)
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Keywords | 肝再生 / 血小板 / 線維化抑制 / 肝硬変 / S1P |
Research Abstract |
我々は過去に血小板が肝再生を促進する機序の一つとして、血小板に含まれるスフィンゴシン1リン酸(S1P)が肝類洞内皮細胞のIL-6分泌を促進することで、肝細胞増殖を促進することを見いだした。今回はS1Pに着目し、不死化ヒト肝類洞内皮細胞株(TMNK-1)を用いてin vitroの実験を行った。S1PをTMNK-1に添加したところ、TMNK-1の抗アポトーシス効果とIL-6分泌促進効果を認めた。S1Pを添加、非添加TMNK-1培養上清をヒト肝細胞に添加したところ、S1P添加TMNK-1上清はS1P非添加TMNK-1上清と比較して有意に肝細胞増殖を促進した。また、肝類洞構成細胞、肝細胞に対するS1Pの影響を検討した。S1Pを不死化ヒト肝星細胞(TWNT-1)に添加したところ、TWNT-1の細胞生存低下と線維化の抑制効果を認めた。S1Pをヒト肝細胞に添加したところ、明らかな細胞増殖は認めなかったが、AktやERK1/2などの増殖系シグナルの活性化を認めた。現在、肝切除や生体肝移植後の肝不全、ウイルス性肝炎やNASHなどによる肝硬変に対する有効な治療法は確立されていない。S1Pを肝類洞内に特異的に集積させるdrug delivery system(DDS)を確立するため、肝類洞内皮細胞が血中で唯一発現するヒアルロン酸受容体に着目した。北海道大学原島研究所と共同研究を行い、ヒアルロン酸リポソームにS1Pを搭載することに成功し、また生体顕微鏡を用いて肝類洞壁にリポソームが実際に集積することを確認した。肝再生促進、線維化抑制において、機能障害を起こしている肝類洞内皮細胞を再生させることは肝臓全体の再生にきわめて重要であり、このDDSは臨床に応用可能な有効な新規治療法になり得ると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不死化細胞を用いたin vitro実験においては前述のようにおおむね予測された結果が出た。申請書の研究計画の通り、平成24年度より肝障害マウスモデルを用いた動物実験を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
S1P搭載リポソームを各肝障害マウスモデルに投与し、肝再生促進効果、肝線維化抑制効果、肝障害抑制効果、残肝機能などを検討する予定である。肝障害モデルとしては、肝切除モデル、肝硬変モデル、肝硬変+肝切除モデル、虚血再還流傷害モデルを検討している。
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