2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390322
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田浦 康二朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
波多野 悦朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80359801)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 肝移植 / 脾臓 / 免疫 |
Research Abstract |
脾臓摘出が肝線維化の進行に及ぼす影響について再検証すると共に、脾臓の肝線維に及ぼすメカニズムを解明するために、以下のような実験を行った。 (1) 脾臓摘出による肝線維化の影響を検討 マウスを脾臓摘出群、温存群の2群に分け、四塩化炭素、チオアセトアミドおよび胆管結紮による一般的な肝線維化モデルにより線維化を誘導し、脾臓摘出が線維化に与える効果をシリウスレッド染色、ハイドロキシプロリン定量、RT-PCRなどで検討した。その結果、四塩化炭素およびチオアセトアミド誘導肝線維化モデルでは、脾臓摘出群において肝線維化の軽減効果を認めたが、胆管結紮モデルでは有意差な変化を認めなかった。 (2) Th1/Th2バランスの変化、リンパ球サブセットの変化 脾臓摘出が線維化に与える機序の解明として、肝臓でのTh1、Th2サイトカインの測定によるTh1/2バランスの違いの検討、肝内に集積するリンパ球サブセットの変化の解析を行った。サイトカインの計測は、RT-PCRにてmRNAを検出して施行した。計測したサイトカインは、Th1群としてIFNγ、IL-2、IL-12をTh2群としてIL-4、IL-10、IL-13を測定した。その結果、四塩化炭素およびチオアセトアミド誘導肝線維化モデルでは、脾臓摘出群でTh1サイトカインが優位な状態にTh1/Th2バランスが変化していた。胆管結紮モデルでは有意差な変化を認めなかった。 (3) 免疫不全マウスによる検討 上記実験を免疫不全マウスでも行い、線維化やリンパ球に対する脾臓摘出の影響が消失するか否かを検討した。肝線維化の誘導は四塩化炭素を用いて行った。その結果、免疫不全マウスでは、脾臓摘出群と温存群で肝線維化の程度に有意差を認めなかった。また、Thサイトカインバランスの変化も認めなかったことから、肝線維化においてTリンパ球の果たす役割の重要性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の肝線維化誘導モデルにおいて、脾臓摘出が肝線維化の進行を抑制することを確認した。更に脾臓摘出により、肝臓でのThサイトカインの発現が変化し、脾臓摘出群ではTh1/Th2バランスがTh1優位な状態に変化していることを認めた。脾臓摘出による肝線維化の抑制と肝臓でのThサイトカインバランスの変化の関連を検証するために、T細胞を欠損している免疫不全マウスを用いて同様な肝傷害誘導実験を行った。その結果、免疫不全マウスでは脾臓摘出による肝線維化の抑制効果を認めず、肝臓でのThサイトカインバランスの変化も認めなかった。これらの結果から、脾臓摘出によるTリンパ球の動態の変化が肝線維化において重要性な役割を果たしている可能性が確認された。このように実験はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の如く、概ね実験は順調に進んでいる。今後は、肝傷害時に脾臓においてTリンパ球にどのような変化が起こっているのかを、免疫染色やRT-PCRなどの手法を用いて検討する。肝臓においても免疫染色などを用いて肝傷害時のTリンパ球の変化を検討する予定である。また、脾臓のTリンパ球が実際に肝傷害時に肝臓へ遊走しているのかを全身GFPマウスを用いた実験で検討する。そして、脾臓を介在した肝臓でのTリンパ球の変化が、肝傷害時のサイトカインバランスの変化にどのようなメカニズムで影響を及ぼしているのかを解明するために様々な実験・測定を施行していく予定である。
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Research Products
(8 results)