2012 Fiscal Year Annual Research Report
メチル化DNAをバイオマーカーに用いた非侵襲的がん総合検診パラダイムの構築
Project/Area Number |
23390323
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
永坂 岳司 岡山大学, 大学病院, 助教 (30452569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 俊義 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00304303)
八木 孝仁 岡山大学, 大学病院, 教授 (00304353)
貞森 裕 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30362974)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | がん検診 / メチル化DNA / miRNA / 消化器癌 / 肺癌 / 検便 / 喀痰 |
Research Abstract |
【P1: 喀痰を用いた肺がんスクリーニング試験の実地と解析】昨年度より採取された喀痰検体はマーカーセットを用いて適宜解析を行っている。現在150の肺切除患者から得られた喀痰を解析中である。途中解析で、感度の低いマーカーを除外し、感度の高いマーカーに変更を行い再解析も進めているところである。 【P2: 消化器がんスクリーニング試験検体の組織特異的メチル化領域マーカーセットを用いた再解析】当院にてインフォームドコンセントを得て収集された400便検体から抽出されたDNA を対象に消化器がん特異的メチル化マーカーセットを用いて解析を行った。これらに加えて、鳥取市立病院検診センターにて得られた検診受診者600名の便検体を鋭意解析中である。組織特異的メチル化マーカーは現在のところ設定が難しい状態である。microRNAについては組織特異的な発現を認めるmiRNAを同定し、現在、便から簡易に検出できる方法を構築中である。 【P3: 簡易便/喀痰遺伝子検査によるがんスクリーニングのためのカットオフ値の最適化】現在までの解析では、本研究参加者のうち解析終了の170例(大腸癌[n=57]、大腸腺腫[n=28]、上部消化器癌[n=24]、健常人[n=61])の便検体を2日間収集し、その便の解析を行い、各消化器腫瘍に対する感度、 特異度の検討を行った。2日間の便検体のメチル化を呈したマーカー累積数をMethylation Score(MS; 範囲0~16)と定義。 MS≧1を検査陽性とすると、大腸癌、大腸腺腫、上部消化器癌に対する感度は、各々、91%、93%、71%と高感度を示したが、健常人に対する特異度は74%とやや低い傾向を認めた。次に、MS≧2を検査陽性とすると、大腸癌、大腸腺腫、上部消化器癌に対する感度は、各々、68%、71%、38%となり、健常人に対する特異度は93%を呈した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喀痰を用いた肺がんスクリーニング試験の実地においては、RASSF2遺伝子のメチル化の頻度が想定よりも低い傾向が認められたため、検出マーカーには不適と判断し、新規にRASSF1Aをマーカーに加え、再度、検出条件の最適化を行っている。その部分以外はほぼ順調である。 簡易便遺伝子検査による消化器がんスクリーニングであるが、 MS≧1を検査陽性とすると、大腸癌、大腸腺腫、上部消化器癌に対する感度は、各々、91%、93%、71%と高感度である。特に上部消化器がんの内訳は、胃癌が3例、十二指腸癌が2例、肝癌が6例、胆管癌が5例、膵癌が8例であり、胃よりも肛門側臓器の癌でよりMSが高い傾向が認められ、新規消化器がんスクリーニングツールとしての有益性が認められたと考えられる。組織特異性に関しては、現在のところ有効なメチル化マーカーは発見できておらず、miRNAによる組織特異性の検出を研究開発中であるが、スクリーニングツールとしてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
喀痰を用いた肺がんスクリーニング試験の実地においては、より適切なマーカーを再度選択し(新規マーカーパネル)、そのマーカーパネルを用いて簡易喀痰遺伝子検査によるがんスクリーニングの再構築を行うことでより精確性の高い簡便なスクリーニング技術を構築できると考えている。 簡易便遺伝子検査による消化器がんスクリーニングであるが、まずは1000例の検体の解析とその臨床結果との照合を行い、まずはスクリーニングとしての最終的な有効性の検討を行う。組織特異性の検出には、メチル化DNAやmiRNAだけでなく、現在使用している8マーカーのPCR増幅物内のCpGサイト個々のメチル化の有無の詳細な検討により推測する方法も考えている。具体的には、蛍光マイクロビーズを使った1ウェル当たり最大500項目までの多項目同時バイオアッセイが可能である多項目同時測定技術(Luminex)を本スクリーニングに応用・開発することを目標とする。多施設での各消化器癌手術予定患者及び消化管内視鏡施行された健常人の保存された便検体の再解析を行い、その解析結果を臨床情報と照合することにより、組織特異性の検出の可能性を検討する予定である。
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