2012 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的プロテオーム解析を用いた膵臓癌の発癌と転移機序の解明とバイオマーカーの開発
Project/Area Number |
23390326
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
谷内田 真一 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20359920)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | プロテーム解析 / 転移 |
Research Abstract |
平成23年度に、膵臓がんの解剖症例の細胞株(同一症例の①腹膜播種転移巣、②肝転移巣、③肺転移に3つの株)を用いて、網羅的なプロテオーム解析を行った。解析は抽出方法により、Secrotome proteomics(分泌タンパク)とMembrane proteomics(膜タンパク)に分けて解析した。 平成24年度は、これらの網羅的なプロテオーム解析を、独自のアルゴリズムにしたがって、腹膜播種転移巣に特に高いもしくは低いタンパク発現、肝転移巣に特に高いもしくは低いタンパク発現、肺転移巣に特に高いもしくは低いタンパク発現を、分泌タンパクと膜タンパクに分けて、それぞれトップ20のタンパクをさらに詳しく検討した。解析方法は培養細胞株から抽出したタンパクを用いてWestern Blotting法と、同細胞株から回収したペレットをホルマリン固定、パラフィン包埋してスライドを作成し、免疫組織化学染色を行った。その結果、網羅的なプロテオーム解析の結果の多くは、Western Blotting法と免疫組織化学染色で同様な結果が得られることを確認した。さらに、これらのタンパク発現と遺伝子発現のレベルの関連性を検討するために、DNA Microarrayで解析した。さらに、次世代シークエンス技術で遺伝子変異の有無を解析した。その結果、大変興味深いことに遠隔転移巣(肝転移と肺転移巣)の細胞株は、よく似たタンパクや遺伝子発現のパターンを示し、腹膜播種転移巣とは全く異なっていた。特に、遠隔転移巣ではVimentinなどの間葉系マーカーが高発現を示し、腹膜播種転移巣ではE-cadeheinなどの上皮性マーカーが高発現を示した。これらの所見は、がんの遠隔転移にはEMT(Epithelial-Mesenchymal-Transition)が関連していることを裏付ける所見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、概ね順調に進んでいるが、個々のデータ解析(例えば、マイクロアレイのデータ解析など)はやや遅れている。また、本研究は米国・Johns Hopkins大学の試料を用いてスタートしたが、研究代表者の所属施設の異動(香川大学→国立がん研究センター・研究所)に伴い、本邦における膵臓がん症例の試料の収集が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これらの所見を多数例の膵臓がん症例で検証する予定である。これまでは主に研究対象を一症例にしぼって、出来るだけ深い検討を行ってきた。今後は、我々が作成したTMA(Tissue Microarray)等を用いて免疫組織化学染色法で、ターゲットとなるタンパクの組織内の発現を検討する。このTMAには、多数例(13例)の腹膜播種転移巣と肝転移巣、肺転移巣の組織切片が、1枚のスライドガラス上に整列固定させた我々のオリジナルのものである。また、ELISA法を用いて、患者血液内でターゲットとなるタンパク量が測定可能か否かについても検討する。これらの所見と臨床・病理学的因子を比較し、これらのタンパクの臨床的意義について検討する。さらに、本年度は本研究を総括し、膵臓がんのバイオマーカーの開発だけでなく、発癌や転移機序の解明に寄与したい。
|
Research Products
(3 results)