2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23390371
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Research Institution | Clinical Research Center for Allergy and Rheumatology, National Hospital Organization, Sagamihara National Hospital |
Principal Investigator |
福井 尚志 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 政策医療企画部, 特別研究員 (10251258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 宏 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 遺伝子診断・治療研究室, 室長 (00372293)
鈴木 孝昌 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子細胞医薬部, 室長 (30226526)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 血管新生 / VEGF-A |
Research Abstract |
前年度までの研究によってヒトのOA軟骨から荷重によってVEGF-A、FGF-2、さらにFGF-2の生理作用を増強する可能性のあるファイブロネクチンが多量に遊離することが明らかになった。昨年度までに行った動物実験においてこれらのタンパクの強制発現実験を行ったが、この実験では関節内にOA様の変化が生じることを十分証明できなかった。しかし一方でヒトOAおよび対照膝関節から採取した滑膜組織の解析の結果、OAの滑膜病変に血管新生が密接に関与する可能性が強く示された。本年度はこの結果に基づいてヒトの膝OA症例に実際にVEGF-Aの活性を抑制する作用のあるbevacizumabを関節内に投与し、その結果臨床症状や関節液中の種々の因子の濃度がどのように変化するかを検証した。本研究は研究代表者らが所属する国立病院機構相模原病院において厚生労働省の定める臨床研究の指針に従い、倫理審査を経て行われた。 この研究の結果、bevacizumabを週1回、5週間にわたって投与することによって関節液中の活性のあるVEGF-Aの濃度が低下する傾向が示された。しかし濃度の低下は症例によっては認められず、投与量、投与の間隔・回数に関してさらに検討する必要があると思われた。しかし関節液中のVEGF-Aの活性抑制が不十分な症例があったと考えられるにもかかわらず臨床成績はbevacizumabの5回投与によって全体として有意の改善が見られた。また関節液中の種々の因子の定量的解析の結果、bevacizumabの5回投与によって関節液中のMMP-1の濃度が有意に低下することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画では研究の第一の目的である関節液中の滑膜病変誘導因子の同定について、第2年度までの解析から結局VEGF-AとFGF-2以外の因子を見出すことができなかった。またこの知見に基づいて行った動物実験ではVEGF-AとFGF-2を強制発現しても当初予期したような関節内の変化を誘導することができず、本当にこれらの因子がOAにおける滑膜病変を誘導する因子であるという証明は現時点ではできていない。これらの点で本研究は当初予想した成果を下回ったことになる。しかし一方で本研究では本年度、当初予定していなかった実際のヒトのOA症例においてVEGF-Aの活性を阻害する臨床研究を行うことができた。これには固形ガンや眼科疾患である加齢黄斑変性症に対する治療薬として一般に臨床応用されているbevacizumabが使えたことが大きく貢献している。この生物製剤(bevacizumabはVEGF-Aに対する中和活性をもつヒト化抗体である)はガンの治療の際に静脈内投与によって全身に投与され、また加齢黄斑変性症の治療では眼球内に直接注入される。薬剤の副次的な作用や組織内に直接投与した際の問題などについてはすでに明らかになっており、これらの知見をもとにして実際に臨床研究としてbevacizumabの関節内投与を行った。投与の結果生じる臨床症状の変化や関節液中の諸因子の濃度の変化を知ることができた点で本研究は当初の予定より一歩踏み込んだ成果を得ることができたと考えられる。これらを包括して評価すれば、研究計画の進展はおおむね順調であったと言いうる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者らは、本研究で採った研究手法によってOAの滑膜病変に関与する因子を見出すという作業は昨年度まででほぼ終えたと考えている。OAの治療への実際の展開ということを考えた場合、今後の課題は新たな因子の発見ではなく、むしろ今までに見出された血管新生という現象がヒトのOAにおける滑膜病変の成立に実際にかかわっていることの証明であろう。また本研究の最大のadvantageはヒト検体の解析を通じてヒトのOAの病態を明らかにすることにあった。したがってそこから見出された知見が実際にヒトのOAの病態で重要であることが証明されない限り、本研究はある意味完結しないことになる。この点において実際のヒトOA関節にbevacizumabを投与した結果の解析は、本研究において非常に重要な意味を持つ。 今後の研究ではbevacizumabの投与法を検討することでOAの関節液中のVEGF-Aの活性をより完全に抑え込む方法を見出し、それによって症状の変化、関節液の変化がどのようになるかをすでに得られた知見と照らし合わせて検討していく。この検討結果はヒトのOAで生じる滑膜病変にVEGF-Aの活性を介した血管新生がどの程度関与しているのかを明らかにしていく上で重要であり、またその知見はOAの新規の治療法に直接的に発展しうるものである。OAの滑膜病変の機序として血管新生は以前から報告もあり、決して新規のものではない。しかし本研究の結果から血管新生がOAの病態や症状の発現に実際どの程度重要なのかが明らかになると考えられる。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Development of a novel immunoassay for the measurement of type II collagen neoepitope generated by collagenase cleavage.2012
Author(s)
Takahashi T, Naito S, Onoda J,Yamauchi A, Nakamura E, Kishino J, Kawai T,Matsukawa S, Toyosaki-Maeda T,Tanimura M, Fukui N, Numata Y,Yamane S.
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Journal Title
Clin Chim Acta
Volume: 413
Pages: 1591-1599
Peer Reviewed
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[Journal Article] Potential plasma biomarkers for progression of knee osteo-arthritis using glycoproteomic analysis coupled with a2D-LC-MALDI system.2012
Author(s)
Fukuda I, Ishihara T, Ohmachi S,Sakikawa I, Morita A, Ikeda M,Yamane S, Toyosaki-Maeda T,Takinami Y, Okamoto H, Numata Y,Fukui N.
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Journal Title
Proteome Sci
Volume: 755
Pages: 36
DOI
Peer Reviewed
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