2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経障害性疼痛治療に有効な薬剤の機序解明―下行性抑制系の活性化と薬剤可塑性―
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23390373
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小幡 英章 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20302482)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ノルアドレナリン / セロトニン / 脊髄 / グリア / ラット |
Research Abstract |
本年度は研究計画に従って「目的2:α2受容体を介したAChの放出とその後の鎮痛作用の機序を明らかにする」に関する研究を行った。これまでの我々のグループでの研究で、脊髄後角のα2受容体を刺激すると、神経障害性疼痛の動物モデルでは、本来Gi/o蛋白に結合しているα2受容体が、Gs蛋白に結合して興奮性に変化しアセチルコリンを放出する。ところが正常動物ではこの現象は起こらないことがシナプトソームを用いた研究で明らかになっている。そこで今回の研究ではα2受容体の刺激がAChを放出する機序を、マイクロダイアライシス法を用いてin vivoでの解析を行った。 まず選択的α2受容体作動薬のデクスメデトミジンをラット神経障害性疼痛モデルの髄腔内に投与すると、投与量依存性に痛覚過敏を抑制したが、正常ラットに対しては急性の鎮痛作用を示さなかった。次に脊髄にデクスメデトミジンを貫流投与し、アセチルコリンの放出をin vivoマイクロダイアライシス法で測定したところ、神経障害性疼痛モデルではアセチルコリンが増加したが、正常ラットでは変化がなかった。すなわち脊髄α2受容体作動薬は神経障害性疼痛に対してはアセチルコリンの放出を介して痛覚過敏を抑制することが示された(Neurosci Lett 2012;529:70-4)。 次にアセチルコリンの神経障害性疼痛の鎮痛機序を調べるため、コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルを用いて実験を行った。ドネペジルは投与量依存性にラット神経障害性疼痛モデルの痛覚過敏を抑制した。in vivoマイクロダイアライシス法で脊髄のアセチルコリンとGABAが増加した。すなわちアセチルコリンはGABAの放出を促進して痛覚過敏を抑制することが明らかになった(Anesthesiology 2013;118:173-80)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に解決すべき研究テーマ「目的2:α2受容体を介したAChの放出とその後の鎮痛作用の機序を明らかにする」に関しては研究の進展によっておおよその結果が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3つの研究目的があり、目的1と2はほぼ順調に成果が出つつある。今後は目的1と2に関して、未達成の研究を継続しながら、順次目的3(オピオイドの鎮痛作用に対する脊髄5-HTの役割を検討する)の研究課題を進める予定である。すでにいくつかの予備的実験には着手しており、現段階では研究計画の変更等は必要としない。
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