2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト鼻粘膜における粘膜上皮―免疫細胞相互作用のEPIMMUNOME解析
Project/Area Number |
23390398
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
氷見 徹夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90181114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 伸彦 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30404693)
大國 毅 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40464490)
高野 賢一 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70404689)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 上皮細胞 / 鼻粘膜 / 樹状細胞 / タイト結合 / 自然免疫 / アレルギー / ウイルス |
Research Abstract |
自然免疫・獲得免疫機構の成立に,従来あまり重要視されていなかった「粘膜上皮細胞の重要性」が近年提唱されている.機械的バリア機能だけが強調され,「免疫学の舞台」に登場することが少なかった上皮細胞が,免疫応答の起点として中心的役割を担っていることが解明されつつあり,この上皮細胞の免疫臓器としての役割が注目されている.鼻粘膜の「炎症の場」としての役割も,この上皮細胞の機能から解明する必要が出てきた. 本年度の研究実績としては,2つの炎症についての研究を深めた.すなわち,鼻粘膜を舞台とする主要な上気道炎症,「アレルギー性炎症」と「微生物病原体による炎症」にも自然免疫と獲得免疫の両者の炎症反応が病態に関与している.これらの免疫応答のうち獲得免疫系の研究は非常に進んでいる.しかし,自然免疫系についての研究はまだ始まったばかりである.鼻粘膜での上気道炎症において,自然免疫系がどのようなメカニズムにより誘導され機能しているのか, また,抗炎症作用に自然免疫応答はどのように関わっているのかなど,まだまだ明らかでない点が多く残されている. この研究課題では,上気道炎症の病態を新たな視点から解明するために,アレルギーの発症メカニズムにかかわるサイトカインの詳細な検討を,免疫応答のカスケードの段階ごとに検討した.さらに,鼻粘膜構成細胞である上皮細胞・間葉系細胞の機能を解析することは,上気道炎症の病態全体の理解には必要不可欠なアプローチである.最近の新たな自然免疫の概念をもとにした「炎症の型」を鼻疾患の病態に組み入れて検討を加えた.この研究成果をもとにして新しい治療戦略構築を目指すこととした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鼻粘膜上皮と他の間葉系細胞との関連性については,共培養や間葉系細胞の分離培養を用いる手法で詳細な解析が可能となった.さらに,この培養系を用いた種々の物質のアレルギー抑制効果やウイルス感染抑制効果の評価につながるデータが得られ,社会的な還元を目指す新たな創薬あるいは機能的食品の開発の基礎研究となることが確信できた.さらに,アレルギーについては上皮産から産生されるアレルギー誘導サイトカインの詳細な検討を行い論文とした.自然免疫の分野ではタイト結合を中心としたバリア機能についての詳細な検討を継続し,総説としてまとめ,さらに新しい観点からの解析も試みた.これらに関しては,十分に達成できており,新しい概念の提供も可能となっている.また,アレルギーに関与する脂質メディエーターについては受容体の解析と局在についてヒト鼻粘膜の検討を行い論文化した. しかし,もっとも進展が遅れているのは,樹状細胞と上皮の関連である.上皮内にある樹状細胞は最近のマウスの肺での研究で,特徴的な性質を持っていることが報告された.鼻粘膜でもこのことを証明したいのだが,ヒトで用いることのできる手法が限られるため,進展していないのが現状である.
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Strategy for Future Research Activity |
1.アレルギーの抑制効果の研究:機能性食品としてあるいは創薬として,アレルギー抑制効果のある物質の同定についての研究を継続する.さらに,樹状細胞の研究は続けるとともに,鼻粘膜のバリア機能の調節因子と鼻粘膜を介したDDSとしての働きについての関連性についても続けて検討する 2.ウイルス感染についてはRSVについての検討を引き続き行うとともに,現在までに同定したウイルス抑制効果のある物質のほかに,さらにスクリーニングを行っていく.大きな方向性としては,このほかに,RSVの上皮への感染メカニズムについてもさらに検討を重ねる. 3.アレルギー発症にウイルス感染がどのように関与しているかを検討する.この課題は,RSVが小児の喘息の重症化に関与していることが疫学的に知られているため,鼻粘膜でのRSV感染が,どのようにTh2にシフトさせているかを突き止めることである.
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[Journal Article] Hop water extract inhibits double-stranded RNA-induced thymic stromal lymphopoietin release from human nasal epithelial cells.2013
Author(s)
Fuchimoto J, Kojima T, Kobayashi N, Ohkuni T, Ogasawara N, Masaki T, Obata K, Nomura K, Kondoh A, Shigyo T, Himi T, Sawada N.
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Journal Title
Am J Rhinol Allergy.
Volume: 26
Pages: 433-8
DOI
Peer Reviewed
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