2013 Fiscal Year Annual Research Report
網膜浮腫をおこすノックアウトマウスを用いた糖尿病黄斑浮腫の新しい治療法の開発
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23390400
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村田 敏規 信州大学, 医学部, 教授 (50253406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 達朗 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30150428)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ノックアウトマウス / トランスジェニックマウス / kimbaマウス / アドレノメデュリン / RAMP-2 / 光干渉断層計 / 糖尿病黄斑浮腫 / 蛍光眼底造影 |
Research Abstract |
本研究の目的は、遺伝子改変マウスを用いた糖尿病黄斑浮腫の臨床応用可能な治療法の開発である。我が国、そして世界中での勤労世代の失明原因の首位は糖尿病網膜(黄斑)浮腫である。我々が作成したReceptor-activity modifying protein (RAMP)-2ホモノックアウト(KO)マウスは、網膜に浮腫を起こす世界で初めての動物モデルであるが、胎生期に高率に死亡する欠点があった。これまでの研究で、長期間生存するRAMP2のヘテロKOマウスの網膜で、vascular endothelial growth factor(VEGF)を過剰産生させると、高率に網膜浮腫を発症する可能性が示唆された。 これを達成するために、網膜内でVEGFを過剰産生するトランスジェニックマウスである、kimbaマウスとRAMP2のヘテロKOマウスを交配して、より確実に網膜血管の透過性亢進と、網膜浮腫(マウスには黄斑がないので、網膜浮腫と呼称する)を確実に作成し、長期間生存するマウスを作成することが、本研究の大きな目的の一つである。 糖尿病性白内障が起こったマウスで、眼底が観察できなくなっても、一定の混濁まではSD-OCTで網膜の断層像は撮影可能であった。糖尿病黄斑浮腫のマウスの網膜厚を測定する手技は確立したと考えている。しかし、Akinbaマウスは、網膜症の進行が早く、黄斑浮腫の治療を検討する前に病変が増殖期に進行してしまう。従って、現在KimbaマウスとRAMPのヘテロKOマウスを交配して、現在マウスの飼育が確実に行えるようになってきている。今後、RAMP2+/-・kimbaマウス網膜から蛍光色素の漏出が、アドレノメデュリン、PPARγ-ligand、apelinを外因性に投与することで減少するか否かを、蛍光色素の漏出の変化を経時的に検討する。この時、血液中の上記物質の濃度は併せて経時的に測定し、眼局所は代表例から前房水を採取して測定する。これらの実験の、手技的なノウハウが確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の概要にも記載しているとおり、従来このRAMP-2ノックアウト・マウスのうち劇症型であるホモノックアウトマウスを用いて、糖尿病黄斑浮腫の治療研究を行う予定であった。しかし、その出生前・出生後のに死亡率の高さから、治療研究に用いることが実質上困難であることが研究過程で明らかとなった。そこで、本年度から我々は、網膜内でvascular endothleial growth factor (VEGF) を過剰発現して、この結果網膜の無灌流領域と網膜浮腫、そして網膜血管新生を生じるトランスジェニックマウスであるkimbaマウスを取得した。実際にこのマウスの飼育を開始して、黄斑浮腫を評価するためのマウス用アタッチメントを用いたspectral domain optical coherence tomography (SD-OCT)の画像を、マウスの小さくて高屈折の眼球でも撮影するノウハウを確立した。更に、kimbaマウスが血管新生を生じることも、さらに、マウス用アッタッチメントを用いたHeidelberg retina angiograph (HRA)を用いた蛍光眼底撮影に成功した。FITCデキストランを用いた、網膜flat mountで確認する方法も確立した。 既に、kimbaマウスとRAMP-2ノックアウト・マウスの交配研究を研究協力者の今井章が実行中で、現在実験に使えるまでにマウスの数を増している。網膜血管の透過性亢進がどのような機序で発生するのか。RAMP-2の補充、アドレノメデュリンの補充療法で、網膜血管の透過性亢進が治療可能で、黄斑浮腫の治療法として確立できるか否かを検討を続ける。 使用するマウスの種類の変更を余儀なくされたため、達成度はやや遅れているとも考えられるが、使用する手技は確立しているので、今後急速に実験データーを得ることができると期待できるので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目標は、患者負担の少ない安全で安価な糖尿病黄斑浮腫の治療法を開発し、臨床応用につなげることである。現在、世界的に抗VEGF薬を持続的に眼球内に注射すれば、糖尿病黄斑浮腫が治療可能であることが証明されている。しかし、頻回の硝子体注射が眼内炎という失明に繋がりうる疾患の原因となり得ること。抗VEGF薬が高価であり、患者負担、国の医療費への負担が過大となり、その解決方法が模索されている。 一方で、網膜の血管閉塞部位(無灌流領域)にレーザーを照射することで眼内のVEGFレベルが低下することは経験的に知られているが、従来、網膜に無灌流領域を形成する動物モデルがなく、これを証明することができなかった。 kimbaマウスとRAMP-2ノックアウト・マウスを交配したマウスでは、網膜無灌流領域が形成され、さらに網膜血管新生も生じる。アドレノメデュリンの補充と併せて、選択的に網膜の無灌流領域を凝固することで、眼内VEGFレベルが低下することを前房水を採取して確認する。薬剤投与、レーザーの併用、などにより、kimbaマウスとRAMP-2ノックアウト・マウスを交配したマウスにおける眼内VEGFレベルを持続的に安価に、確実に低下させる方法を開発して、多くの糖尿病黄斑浮腫による失明患者を救う治療法を開発したい。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Adrenomedullin-RAMP2 system is crucially involved in retinal angiogenesis.2013
Author(s)
Iesato Y, Toriyama Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Yoshizawa T, Koyama T, Uetake R, Yang L, Yamauchi A, Tanaka M, Igarashi K, Murata T, Shindo T
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Journal Title
American Journal of Pathology
Volume: 57
Pages: 2380-2390
DOI
Peer Reviewed