2011 Fiscal Year Annual Research Report
房水内生理活性物質が房水動態および濾過手術の成績に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
23390403
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷原 秀信 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60217148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川路 隆博 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30423677)
井上 俊洋 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (00317025)
稲谷 大 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (40335245)
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Keywords | 緑内障 / サイトカイン / 房水 / MCP-1 / 線維柱体 / シュレム管 |
Research Abstract |
原発開放隅角緑内障34例と落屑緑内障39例に対して線維柱帯手術を行う際に房水サンプルの採取を行った。手術開始と同時に角膜輪部から30ゲージ針を用いて房水を70-100μ1採取した。この時血液や組織によるコンタミネーションを避けるよう注意を払った。コントロールは緑内障を有しない白内障52例とした。ジェネティックラボ社に依頼しサイトカイン濃度の定量を行ったところ、緑内障症例においてIL-8、MCP-1、EGF、PDGF-AAの濃度が上昇しており、TNF-α、VEGFの濃度は下降していることが示された。このうち最も高濃度であったMCP-1の濃度に影響する背景因子を重回帰分析にて同定したところ、白内障手術既往(P<0.0001)が最も有意にMCP-1濃度を上昇させる因子であった。その他、高齢(P=0.0217)、男性(P=0.0454)も有意な因子であった。眼圧、病型、点眼数、治療期間などは有意ではなかった。 次にブタの線維柱帯細胞を単離培養し、MCP-1の影響を確認した。MCP-1処理は重合アクチンの程度に有意な変化を与えず、コラーゲンゲル収縮、細胞外マトリックス産生にも影響を与えなかった。一方でMCP-1はシュレム管内皮細胞のZO-1の細胞内局在を変化させ、細胞単層培養の透過性を亢進させることが判明した。そこでブタ眼球を用いて房水流出率を計測したところ、当初予測した結果とは逆にMCP-1は房水流出率を上昇させることが分かった。これらの作用はCCR2阻害剤で打ち消されたため、MCP-1はレセプターCCR2を介してシュレム管内皮細胞の膜透過性を亢進させ、房水流出率を上昇させると考えられた。 これらの結果から前房内MCP-1は緑内障病態に関わる可能性が高く、白内障手術後には濃度が上昇することが示唆された。またその作用は房水流出を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載していた実験の多くを施行し結果を確認することが出来た。予想と異なる結果が出た実験計画については一部計画を変更したが、おおむね目標を達成したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、MCP-1と濾過手術成績の関連を調べる。緑内障症例の房水サンプルは濾過手術時に採取するものであるから、その後経過を追うことで手術成績の解析が可能である。またMCP-1が濾過手術に及ぼす影響を分子生物学的に解析するために動物実験を行い、創傷治癒に与える影響を解析する。
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Research Products
(12 results)