2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体侵襲制御と組織修復・再生における骨髄由来細胞の機能解析
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23390413
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
並木 淳 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20189195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石濱 泰 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30439244)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臨床 / 集中治療医学 / 生体侵襲制御 / 単球 / 骨髄 / プロテオーム |
Research Abstract |
本研究は急性侵襲に対する生体反応として骨髄から動員される細胞が「組織あるいは全身の維持を図る合目的役割」を果たしているという仮説にたち、骨髄由来の末梢血細胞成分等について侵襲制御と組織修復・再生の観点からの機能解析を行い、新たな治療戦略を提示することを目的とする。 平成24年度は、平成23年度に得られた重症sepsis患者の末梢血単球における解析結果について症例数を重ねるとともに、対象疾患を重症外傷、重症熱傷に広げて急性侵襲下における末梢血単球・リンパ球などにおける蛋白質の発現を解析した。その結果、重症sepsisの病初期において増加していた活性化単球(表面抗原CD14 CD16 二重陽性)は、重症外傷および重症熱傷ではむしろ減少していることが観察された。さらに、重症外傷/熱傷患者の臨床において観察される感染続発症の観点から、抗原提示能についてHLA-DRの発現で定量評価した。 また、重症sepsis患者については、グラム陰性桿菌の産生するエンドトキシンを除去する目的で施行されるPMX膜を用いた血液浄化の効果を検討した。その結果、病初期において増加している単球(活性化単球)の多くが、PMX膜に吸着することによって除去されていることが示唆された。この作用が病態に与える影響について、臨床経過と合わせた検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床検体の収集と、患者末梢血からの単核球の分離、フローサイトメーターを用いた細胞表面の解析、そしてフローサイトメーターで分離した細胞分画のリン酸化プロテオミクスによる解析は順調に進行している。一方では、救急患者から採取した末梢血を対象としているため、検体の収集は昼夜を問わず不定期に行わなければならない。そのため、細胞のプリパレーションを経てフローサイトメーターによる処理を加えることの時間的な制約と、人員・機器を確保しなければならない問題が生じた。この点を解決するため、検体の蓄積を待ってからの解析が可能であるか、健常人の検体を用いた検討を平成25年度の当初に行い、効率的な検体の処理手順を確立して症例数の増加を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は上述した臨床検体の効率的な処理手順の確立により、重症sepsis、重症外傷、重症熱傷の救急患者からの検体数を重ねるとともに、対象疾患を出血性ショックに広げる。重症外傷については、損傷部位による侵襲下の蛋白質反応の相違と、それが病態に及ぼす影響についても検討を加える。 さらに、臨床検体を対象とした解析結果から得られた仮説を検証するため、臨床病態を反映した動物モデルを作成して、心臓採血により末梢血を得て解析を行う。動物モデルには、水蒸気を用いた熱傷、腹部実質臓器の圧挫外傷、液体窒素を用いた凍結損傷、腸管結紮と穿孔によるsepsisなどを予定している。
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