2012 Fiscal Year Annual Research Report
In vivoイメージングによる唾液腺機能の可視化と神経制御システムの解明
Project/Area Number |
23390425
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
谷村 明彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70217149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (00305913)
森田 貴雄 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (20326549)
東城 庸介 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90111731)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 唾液腺 / カルシウム / イノシトール三リン酸 / 蛍光イメージング / 口腔乾燥症 |
Research Abstract |
Ca2+応答による唾液分泌の調節機構:唾液腺のCa2+応答と唾液分泌の関係を明らかにするために、遊離顎下腺細胞を用いたCa2+動態の解析と、麻酔下のラットへのムスカリン受容体作動薬投与による唾液分泌を解析した。その結果、最大反応の約30%という小さなCa2+応答を起こす濃度の作動薬によって、ほぼ最大の唾液分泌が起こる事が明らかになった。さらに、口腔乾燥症治療薬として臨床的にも用いられているピロカルピンが、部分アゴニストとして作用し、単独では唾液腺腺房細胞の弱いCa2+応答と唾液分泌を起こすが、カルバコールやベタネコールによるCa2+応答や唾液分泌を減弱させることが明らかになった。 In vivoイメージングによるCa2+応答の解析:唾液分泌とCa2+応答の関係を直接的に解析するために、アデノウイルスベクターを使ってCa2+センサー(YC-nano50あるいはG-GECO)遺伝子を顎下腺腺房細胞に導入し、顎下腺細胞のin vivo Ca2+イメージング解析を行った。その結果、ピロカルピンが小さなCa2+応答を起こすことや、ベタネコールによるCa2+応答を減弱させることが生きたラットを使って確認することができた。また、この解析で、唾液分泌には腺房細胞のCa2+応答に加えて血流が大きく関与する事が示唆された。 神経刺激による唾液分泌とCa2+応答の解析:舌神経の電気刺激によって、反射性に副交感神経を興奮させることによって、唾液腺に小さなCa2+応答や唾液分泌が起こることが確認された。また、交感神経を切除したラットでは、舌神経刺激によって顎下腺の血流が大きく増加することが明らかになった。 新規IP3センサーの開発:有機蛍光物質とIP3受容体のリガンド結合ドメインを使った新規IP3センサーの開発に成功した。このセンサーについては、H25年度にさらなる改良を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生きた動物を用いたintravitalイメージングによって、唾液腺腺房細胞のCa2+応答と唾液分泌の関係を直接的に解析することに世界で初めて成功した。これと同時に、唾液腺の血流のイメージング解析によって、唾液分泌と血流の関係が明らかになってきた。これはYC-nano50やG-GECOと言うCa2+親和性が極めて高い蛍光センサーや蛍光変化率が極めて大きな蛍光センサーを用いることによって実現したものであり、すでに当初の研究目的を達成している。また、この実験系を利用する事によって、唾液分泌の調節機構について、中枢神経系の関与を含めて検討することが可能になった点は、当初の予想以上の成果と言うことができる。 本研究では、唾液分泌に伴って、メイヤー波という周期的な血流変化が唾液腺に起こる事が明らかになった。これは全く予想していなかった結果であり、この反応に交感神経系が大きく関与することを強く示唆するデータを得ている。この反応は唾液分泌調節における非常に興味深い反応であるが、それと同時にこの血流変化が、イメージングに用いる励起光や蛍光に影響することがわかった。cAMPやIP3を測定するための分子センサーは、Ca2+測定用分子センサーと比較して蛍光変化率が小さく、血流の影響を受けやすいため、これらの解析には血流の影響を補正する方法が必要と考えられる。これらの点から、cAMPやIP3のin vivoイメージングに関しては当初の計画よりも若干遅れている。 唾液分泌調節機構の解明という目的から総合的に判断すると、当初の主要な目的は達成されており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、唾液分泌の主要な細胞内メッセンジャーであるCa2+動態をリアルタイムイメージングを生きた動物で解析するintravital Ca2+イメージング法を確立した。この研究によって、腺房細胞のCa2+応答に加えて、唾液腺の血流が唾液分泌に大きく関与する事が明らかになった。今後はこの研究をさらに発展させるために、唾液分泌のリアルタイムモニタリング法を確立する。 またH24年度の研究成果として、口腔乾燥症治療薬であるピロカルピンが部分作動薬として作用することがin vitroおよびin vivoの実験系で明らかになった。この発見を発展させて、intravitalイメージングを使った口腔乾燥症治療薬の開発や、薬物の副作用による口腔乾燥の改善法の研究を進める基礎技術の確立をめざす。特に、intravitalイメージングでは薬物の唾液腺に対する直接作用に加えて、中枢神経系や循環器系に対する作用の解析が可能である。この特徴を活用することによって、これまで評価が難しかったストレスや中枢神経系を介する作用を解明するための研究基盤の確立をめざす。 また、当初の計画から若干遅れているcAMPやIP3のイメージング解析の実現には、蛍光シグナルに対する血流の影響を補正あるいは最小化する手段が必要である。その手段として測定に励起光を用いない発光センサーの利用と、蛍光変化率の大きな蛍光センサーの開発を進める計画である。
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Research Products
(7 results)