2013 Fiscal Year Annual Research Report
In vivoイメージングによる唾液腺機能の可視化と神経制御システムの解明
Project/Area Number |
23390425
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
谷村 明彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70217149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (00305913)
森田 貴雄 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (20326549)
東城 庸介 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90111731)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 唾液腺 / イメージング / カルシウムシグナル / 唾液分泌 / 発光センサー |
Research Abstract |
1、アデノウイルスベクターを使って蛍光Ca2+センサー遺伝子を導入し、生きた動物の顎下腺細胞のCa2+応答を定量的に解析することに成功した。さらにCa2+応答と同時に、唾液分泌や血流変化をリアルタイムで解析できる実験系の確立によって、Ca2+応答と唾液分泌の関係が初めて明らかになった。また、α受容体刺激による腺房細胞の持続的Ca2+応答と一過性の唾液分泌から、唾液分泌と血管収縮反応の関係が明らかになった。さらに、舌神経の電気刺激によって、反射性に副交感神経を興奮させた場合は、唾液腺に小さなCa2+応答や唾液分泌が起こることが確認された。神経刺激によるCa2+応答は、薬物刺激と比較して局所的で小さな反応であるにも関わらず、薬物刺激に匹敵する唾液分泌が観察されたことから、Ca2+以外の細胞応答あるいは腺房細胞以外の細胞(例えば導管)が、分泌に関与する可能性が示唆された。 2、新しい発光センサー(Nano Lanthern Ca2+やNano Lanthern cAMP)を使った発光イメージング解析を実施した。培養唾液腺細胞を使ったCa2+やcAMPの発光イメージング解析に加え、アデノウイルスベクターによる顎下腺腺房細胞への遺伝子導入によって腺房細胞のCa2+およびcAMPシグナルの発光イメージングに成功した。 3、IP3センサーの開発 従来の一分子FRETを使った蛍光IP3センサーの蛍光変化率を大きく上回るIP3センサーの開発を行った。この新しい蛍光センサーは蛍光タンパク質(CFP)あるいはシステイン結合性蛍光物質(DACM)でラベルしたIP3受容体のリガンド結合ドメインと蛍光リガンドの間のFRETを利用するもので、これまで最大15%程度であった従来のIP3センサーの蛍光変化率の10-20倍の変化率を示した。今後、このセンサーを細胞内に導入する方法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、本研究の主要な目的の1つは、生きた動物における唾液腺のCa2+応答と唾液分泌の同時解析法の確立であり、この目的は既に達成している。 2、IP3やcAMPのin vivoイメージングに関しては、従来の蛍光センサーを使った解析が困難との判断から、発光cAMPセンサーの利用と新規IP3センサーの開発を試みた。cAMPセンサーについては、ウイルスベクターの作成や唾液腺腺房細胞を使った解析まで達成しており、おおむね計画通りの進展と判断できる。また、従来のIP3センサーの10倍以上の蛍光変化率を示す新規IP3センサーの開発に成功しているが、この新規センサーを唾液腺に導入する方法を検討する必要があり、研究期間内にはIP3のin vivoイメージング解析が実施できるかどうか不確定である。 3、本研究では、薬物刺激に加えて神経刺激や味覚刺激を介する、より生理的な反応の解析をめざしている。この中で、神経刺激によるin vivo Ca2+イメージングと唾液分泌の同時解析は既に成功し、味覚刺激による反応を解析中である。 一部の研究計画に若干の遅れがあるが、当初計画より進んでいる項目もあり、全体的には概ね予定通りの達成度であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、これまでの研究により、生きた動物を使った唾液腺腺房細胞のCa2+応答と唾液分泌の関係に、血流変化を加えた考察が可能になった。また、神経刺激による唾液腺のCa2+応答と分泌の同時解析も可能になった。今後、この実験系を利用して、唾液分泌調節における交感・副交感神経の機能を明らかにする。具体的には薬理学的方法(受容体遮断薬)や生理学的手法(神経切断)を使って、神経刺激や味覚刺激による唾液腺の反応に関与する受容体を明らかにする。また、この実験系を利用して、口腔乾燥症の原因となる薬物や口腔乾燥症の治療に使われる薬物の作用機序を解析する。 2、これまでの研究で唾液腺全体のCa2+応答のin vivoイメージング解析が可能になった。今後、この技術を発展させ、細胞レベルのCa2+応答を可視化するためのin vivoミクロイメージング法の確立を目指す。実際には、マクロズーム顕微鏡を使って行っている現在の実験系に、共焦点レーザー顕微鏡解析を加えて、生きた動物を使って細胞レベルのCa2+応答の解析を試みる。 3、新規IP3センサーの開発は、本研究の主要な目的では無かったが、従来のIP3センサーの10倍以上という期待以上の成果が得られた。これは蛍光リガンドと蛍光タンパク質を使ったハイブリッドセンサーである。一方、これをin vivoイメージングで活用するためには、蛍光センサーの細胞内導入法が必要である。研究期間中に、その導入法を検討すると共に、この新規IP3センサー開発のノウハウを活用して遺伝子導入だけで利用できるタンパク質型IP3センサーの開発を試みる。
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Research Products
(12 results)