2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子イメージングを用いた口腔癌微小環境の可視化とその放射線治療への応用
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23390427
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 雅彦 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10272600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 朗 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (00142430)
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Keywords | 分子イメージング / 放射線治療 / 腫瘍微小環境 |
Research Abstract |
本研究では、細胞動態や低酸素領域を分子イメージングによって可視化し、時空間的な情報を取得して、放射線治療における臨床の場への還元を目指すものである。本年度の成果を、実施計画に照らして以下に述べる。 1.Fucciプローブを用いた細胞動態、低酸素細胞分画の解析 1)増殖分画における細胞周期動態の解析 Fucci発現細胞を用いて、ヌードマウス皮下に固形腫瘍を形成させ薄切標本を作製して観察した結果赤色蛍光を示すG0/G1期細胞、緑色蛍光を示すS/G2/M期細胞が混在し、全体に赤色優位であったが、その分布様式に腫瘍内での場所による特異性は認められなかった。10Gy照射すると、1日目には、壊死領域周辺に赤色細胞から成る領域が出現し、その外層はほとんどが緑色となり、2日目には、ほぼ全体が緑色を呈した。意外なことに5日目においてもこの状態が持続していた。G2ブロックの遷延が示唆され、そのメカニズムについてDSB修復との関連で検討を進めている。 2)低酸素分画の解析 低酸素状態、(酸素分圧(PO2)<0.1%)で、Fucci発現細胞を培養すると、十数時間後には、両蛍光タンパク自体は存在するにもかかわらず、両蛍光がほぼ完全に消失することがわかった。この現象は、既存の成熟したFucciプローブが、Fucciの原理に従って特定の細胞周期にユビキチン化によって分解されることと低酸素処理中に合成される酸化を受けない未熟な蛍光プローブの産生によって起こることが判明した。固形腫瘍の低酸素領域を観察する際、注意が必要である。 3)生きたままの状態で固形腫瘍から細胞周期動態情報を得る手法の確立 フォトンイメージャーを用いて、固形腫瘍から発する緑色、赤色蛍光の強度を独立に定量することに成功し、緑色/赤色の比率が、上記1)をよく反映する指標であることがわかった。 2.骨浸潤モデルにおける腫瘍微小環境の可視化 舌癌細胞を骨浸潤モデルに供し、骨浸潤部位とその周囲との低酸素領域を検出したが、有意な相違は現在の所認められていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画について、ほぼすべての項目に関して結果が得られた。特に放射線照射後に認められたG2ブロックの固形腫瘍内での遷延については、腫瘍微小環境が如何に大きな影響を与えるかを如実に示しており、極めて興味深い結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射後に認められた固形腫瘍内でのG2ブロックの遷延は、極めて興味深い現象であり、DNA修復と関連付けて研究を展開し、腫瘍微小環境の意義を追求する。また、フォトンイメージャーによって、腫瘍内のG2ブロックの動態をリアルタイムに定量できる系が確立したことから、これを用いて、様々な応用の可能性が開けた。種々の照射条件等がG2ブロック動態にどのような影響を与えるかについて検討を考慮している。骨浸潤モデルについては、さらなる検討を加える。化学放射線療法は、現在臨床において重要な位置づけにあることから、新規抗がん剤による細胞動態への影響についても検討を考えている。
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Research Products
(3 results)