2011 Fiscal Year Annual Research Report
口腔粘膜のゲノム酸化防御機構の解明と口腔発がん予防検診への応用
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23390468
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
池邉 哲郎 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (20202913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 浩 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (70150422)
鍛冶屋 浩 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (80177378)
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Keywords | ケラチノサイト / 口腔癌 / 活性酸素 / EMT / TRP |
Research Abstract |
口腔粘膜の発がん機構および老化機構において、酸化ストレスによるDNA酸化とその酸化防御システムの関与を調べることを目的として研究を行った。そのために、正常な口腔粘膜のモデルとして正常ケラチノサイトを培養して過酸化水素による酸化ストレス(活性酸素)を加えた。活性酸素によつて変化する発現分子の解析を行ったところ、E-cadherinの発現低下とvimentinの発現亢進、および細胞形態の変化が生じ、上皮間葉移行(EMT)が生じていることが示唆された。さらに、ケラチノサイトは活性酸素によってTGF-betaの発現が刺激されるとともに、TGF-beta自身によってEMTがさらに亢進されることが発見された。正常ケラチノサイトが活性酸素によってEMTを引き起こすことは新しい知見であり、このようなEMTはケラチノサイトのゲノム防御機構を脆弱にする可能性があり、酸化DNA分解酵素であるMutT関連タンパクの発現との関連性を調べる必要がある。また、口腔粘膜の酸化ストレスによる癌化にEMTが関与する可能性がある。同様に、口腔扁平上皮癌細胞を活性酸素で刺激するとケラチノサイトと同様にEMTが生じたため、正常細胞と癌細胞の活性酸素に対する反応の違いを解析中である。 さらに口腔粘膜への環境ストレスを研究する上で、粘膜への温度刺激を仲介する分子としてCa,NaイオンチャネルであるTRPファミリーに着目した。種々のTRPの発現を口腔扁平上皮癌細胞で調べたところ、TRPM8の発現が見られたため、TRPM8のアゴニストであるmentholで口腔扁平上皮癌細胞を刺激した。その結果、カルシウム電流の亢進と癌細胞の運動亢進が見られ、その効果はTRPM8の特異的なアンタゴニストによって遮断された。口腔癌におけるTRPの重要性を示唆する結果となった。このような研究は、口腔粘膜に対する温度刺激の際の酸化DNAの発現変化や活性酸素によるイオンチャネルの変化の研究へと研究が発展することが期待されるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化ストレス刺激による細胞の反応が分子レベルで検出でき、その結果も概ね期待されるデータであるから。
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Strategy for Future Research Activity |
ケラチノサイトおよび口腔扁平上皮癌細胞を活性酸素で刺激した際の分子変化を追及し、その変化を癌化関連因子と老化関連因子に分けて、それぞれの変化を理論化する。それらの分子変化におけるゲノム酸化の意義を明確にするために、それらの細胞のMutT関連タンパクの発現を増減させて、癌化関連因子と老化関連因子の発現を制御できる方策を探る。
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Research Products
(3 results)