2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390490
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
齋藤 やよい 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (40242200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大黒 理惠 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (70510345)
大河原 知嘉子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (80632091)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食環境 / 色彩環境 / 絵画 / 脳血流量 / 視線動線解析 |
Research Abstract |
意図的に色彩を配置して独自に作成した絵画を環境要因として、認知症ケアの効果検証の基礎研究として、絵画による生理的・心理的影響を脳血流量、眼球運動、および主観的評価を行った。 健康な成人女性8名を対象に、色やモチーフが多くストーリー性のある小学校校舎の風景を描いたミッケルアート(スプレーアートEXIN製)を見てもらい、脳機能活性の変化を実験的に調査した。実験は温湿度、照度を調整した同一環境で行い、測定は脳血流量(頭部近赤外光計測装置、日立HOT121B)、眼球運動(アイマークレコーダー、NacEMR-9)により行った。主観的評価は絵画への嗜好、見て感じたこと、覚えていることなどの自由記載内容分析により行った。 その結果、絵画に対して「リラックスする」「生き生きする」「元気いっぱい」「活気がわく」と感じた快適群4名では、絵画を見たことで左脳血流量は0.22mM-mm、右0.24 mM-mm変化したが、感じなかった非快適群4名では左-0.1 mM-mm 0、左-0.09 mM-mmであった。眼球運動は、0.2秒以上の注視の総数、および回数に違いはなかったが見方には違いがあり、非快適群は偏りなく注視するのに対し、快適群は絵画中の特定の場所を有意に長く注視した。また、自由記載の文字数・項目数も快適群に多かった。色彩単独では得られなかった成果が、ストーリー性を持たせた色彩配置によって有意に得られたことは、色彩刺激の方法が無意識ではなく、「快い」「好き」と意識させることでより大きな効果が期待できることを示唆した。すなわち、絵画を快いと感じて注視し、何かを想起・記憶することを通して、脳血流量は増加し、語りの文字数を増加させる効果があることが明らかとなり、意識的に対象の好む情報を取り入れた絵画を提供し、効果的に注視を誘導ことが脳機能活性につながることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り色彩環境刺激が健康人に及ぼす影響に関する基礎的データを得ることができ、その成果は書籍に発表した。さらに対象を発展させ、認知症ケアに結び付けるための学会に発表の予定もある。また、得られた基礎研究のデータをもとに臨床研究に進むために必要な手続きも順調に進んだ。これは、1)実施施設の協力を得ること、2)色彩環境を構成する絵画の作成協力を得ること、3)学内の臨床研究倫理審査の承認を受けること、4)食に関連した口腔機能評価法開発を専門とする研究者との協力体制を整えること、であり順調に準備体制を整えることができた。以上より、平成25年度の研究に向けおおむね順調な進展と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、病院での食環境を想定した計画を立案していたが、よりニーズの高い認知症高齢者や介護保険施設の入所者へも対象を拡大し、大掛かりな環境調整から効率のよい効果が期待できる「絵画」による色彩刺激に焦点化する予定である。
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