2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23390498
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Research Institution | Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
小原 真理子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (00299950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 加代子 首都大学東京, その他の研究科, 教授 (30249172)
石田 千絵 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (60363793)
菅野 太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60436524)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 災害時要援護者トリアージ / 災害急性期 / シミュレーション / 救援者の連携 / 搬送 / 福祉避難所 / 要援護者トリアージ判断基準 |
Research Abstract |
背景・動機:東日本大震災における震災関連死は、避難所で生活する災害時要援護者のリスクが高いと言われている。研究者は減災対策の一助として、災害急性期において〈傷病者トリアージの判断基準〉とは異なる、要援護者の優先度を区分する判断基準を開発する必要性を見出した。 研究目的:災害急性期、住民リーダーが避難所の要援護者を配置区分する際、また福祉避難所への移動の優先度を決定する際の判断基準を開発する。本研究は、トリアージ判断基準の抽出、検証、教育ツールの開発の3つの段階で構成されている。 23年度研究実績:第一段階(2011年9月〜2012年6月)では、東日本大震災において災害発生時要援護者の救護活動に取り組んだ9施設32人の看護職・介護職を対象にインタビューを行った。分析結果から、トリアージの判断基準に影響する要素として、要援護者の個別的要素と要援護者を取り巻く8つの環境的要素、および4区分の判断基準案を導き出した。 24年度研究実績:第二段階に含まれる24年度の研究では、要援護者トリアージの判断基準を検証するシミュレーションを住民及び看護職を対象に4回行った。また災害急性期の被災地において、被災地外から救護活動に取り組んだ経験豊富な医師、看護職、介護職の合計9名に判断基準の妥当性について、インタビューを通し参加者の考えを収集した。双方の取り組みから判断基準については、研究者が開発した案は概ね妥当であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的:「4区分の判断基準」の妥当性について検証することを目的とするシミュレーションを4回行った。 研究方法:2012年11月に開催した第1回目の研究参加者は、東日本大震災で要援護者に対応した被災地の看護職である。第2回目は平成2013年2月、参加者である看護師20名を4グループに分け、作成した事例20例を基にシミュレーションを行った。各事例に関するトリアージ区分の解答例は、過去のシミュレーション結果等から研究者で検証,模範の区分案を基に作成した。グループ毎に各事例のトリアージを実施、続いて,各事例に関する要援護者トリアージのカテゴリーと理由等の内容、さらに要援護者トリアージに対する意見交換、グループ毎の発表内容をデータ化した。3回目は2013年1月、住民57名を対象に実施した。4回目は3月、住民および看護職・介護職48名を対象に実施、現在、分析中である。さらに9名の専門職を対象とするインタビューを実施した。 研究結果:第1回目と第2回目の結果から、20事例のトリアージはほぼ同様の区分であり,研究者間で検討していた模範区分ともほとんどずれは見られなかった.トリアージの判断に迷った事例もおおよそグループで共通していた。また専門職を対象とするインタビューの分析結果から判断基準については、研究者が開発した案は概ね妥当であることが確認できた。 考察:妥当性の担保された基準があることで,専門的な医療の知識を持たない人々であっても,平易な言葉を用いる等の工夫さえあれば要援護者トリアージが実施可能であることが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
「4つの判断区分」の考え方については、概ね共感を得られた。しかし、「区分の2と3は、ロケーションにもよる」「区分3と4については状況による」という意見があった。これらは、実際の災害の規模や天候等の外的要因に左右されるだけでなく、避難所や福祉避難所の準備状況が異なるため、今後は、シミュレーションの設定等、教材開発における十分な検討も必要であることがわかった。 また、取るべき情報の内容といつどの位の情報が必要かで様々な意見があった。大規模災害時の傷病者トリアージでも、いかに短時間で必要最低限の情報を獲得するかが課題となる。本研究では、それを住民自身が行うため、短時間で判断すべき事象とそれを示す簡易な言葉の検討が重要であることが再確認できた。 現状よりも災害関連死を減らすことを目的とした取り組みであるため、判断基準においては、まず経験知による意見を確認できたことの意義は大きい。今後はシミュレーションの状況設定を整えながら、更に、様々な立場の人々の意見を取り入れ作り上げていく必要性が示唆された。 本要援護者トリアージは避難所入口付近で行われることを想定した、いわば最初のトリアージであり,限られた情報による短時間でのふり分けが求められるため,時間の経過に伴い,専門的知識の下で再トリアージを実施することも必要であると考えられた。 まとめとして、住民によりわかりやすい判断基準の表示内容の検討、シミュレーションのシナリオ設定等の方法の検討、教材開発の検討、要援護者トリアージに関する運用の実際に関する検討等である。
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Research Products
(12 results)