2012 Fiscal Year Annual Research Report
退耕還林による中国・黄土高原の造林効果と農村経済開発効果の検証
Project/Area Number |
23401004
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 廉也 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20293938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
縄田 浩志 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30397848)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地理学 / 生態学 / 農業経済学 / 退耕還林 / 黄土高原 |
Research Abstract |
初年度(平成23年度)に実施した広域調査の結果、黄土高原内部における自然的・社会的条件の微細な違いによって、退耕還林の実施状況とその成否、さらには農村開発プロジェクトの成果に大きな地域差が存在することが明らかになった。そこで24年度もさらに広域調査を続け、条件の異なる様々な地域のデータを集め、退耕還林と農村開発の成否を決定する諸要因を分析するための基礎的資料を得ることに重点をおいた。 本年度の広域調査は延安市宝塔区、安塞県、延川県、楡林市で行った。前年度と同様、退耕還林の実施概要を土地利用調査によって把握するとともに、村人へのインタビューによって退耕還林の経緯、村人の評価のほか、村で行われた政府(農業省)主導による農村開発プロジェクトの概要を把握し、世帯の家計状況を推定した。その結果、前年度よりいっそう自然的・社会的条件による地域差の存在が明瞭になった。 以上の広域調査の結果、インテンシブ調査は延安市近郊の農村(A村:退耕還林が比較的良好に実施され、活着率も良く、農村開発プロジェクトも積極的に実施されている反面、出稼ぎによる過疎化が進行している村)と、延川市北部農村(B村:退耕還林の実施率が低く、伝統的農業が持続しつつも過疎化が進行している)に絞って行うことを決めた。 同時に、本年度は同地域について利用可能な過去の地形図・空中写真の所蔵について全国の大学において資料調査を行った。その結果、村の土地利用復元に利用可能な写真資料の存在が明らかとなり、次年度以降に土地利用・土地被覆の復元をあわせて行う見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成23・24年度は広域調査に重点を置いて、2年間のうちにインテンシブ調査の対象村を決定することが主な目標であった。 24年度までの現地調査で、20か村を超える村でそれぞれ複数の世帯に詳細なインタビュー調査を実施し、あわせて土地利用状況を把握した。その結果インテンシブな調査村として、自然的・社会的条件が対照的な2つの村を選ぶに至った。広域調査を実施し、最も重要な目標を達成することができた点で、当初の研究目的はおおむね達成できたと評価する。インテンシブ調査の対象村のみならず、広域調査をおこなった村々のデータの比較によって、黄土高原の退耕還林達成度を類型化するに必要な情報をそろえることができた。この点からも研究は良好に達成出来ていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は予定通り、選定された村においてインテンシブな調査を実施する。現段階で研究遂行上の問題点はないが、政治的な情勢の変化によって現地調査が困難になる可能性はありうる。 また24年度の資料調査によって、黄土高原の長期の土地利用・土地被覆復元が可能な資料の存在が明らかになったことをうけ、次年度は現地調査とあわせてこれらの地理資料の利用によって、黄土高原農村の退耕還林による変化の把握につとめることとする。この作業は本研究の研究目的達成において重要な役割を果たすものと期待できる。 以上の見通しによって研究をすすめるとともに、今年度からは成果発表にも力を入れ、得られた成果は順次学会発表および論文発表によって公表していく。
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Research Products
(7 results)