2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンザニア北東部の農村生計に関するスケール・ギャップを考慮した地域システム分析
Project/Area Number |
23401036
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 元 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 准教授 (10241514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池野 旬 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (40293930)
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Keywords | 地域システム / 農村生計 / 空間スケール / 土地利用 / タンザニア |
Research Abstract |
本研究では,マクロな視点とミクロな視点の間の分析スケール・ギャップを克服して,アフリカ農村生計の実態をより適切に把握するために,地域システムのスケールで実証分析を行う。本年度は,タンザニア北東部農村について,土地利用分析とGIS構築を進めた。研究代表者は,(1)空中写真と衛星画像の解析と現地調査を通してメル山地域と北パレ山塊地域の土地被覆変化を把握し,とくに前者の地域で山腹上部での多年生作物耕地の縮小と季節作物耕地の拡大,山麓での都市的開発区域の拡大を確認した。また,(2)これに標高を加え,地域システム内の各所の立地・環境条件と農村生計の関係を解析可能にするデータ基盤の構築を進めた。当初,道路網のGPS計測を踏まえて各地点の近接性を評価する予定であったが,現地調査の時間的制約のため小径に至るまでの計測は取りやめ,主要道路からの距離帯で近似することにした。他方,画像の局所空隙性解析によって地域システムを構成する基本的な景観単位のスケール特性を見極めることが,分析におけるある種のスケール・ギャップを解消する可能性について検討を始めた。この解析が時間のかかる繰り返し計算を要することを経験し,来年度以降の解析に備えてハードウエア・ソフトウエアを更新した。また,スケール・ギャップの取り扱い方について,マクロな紛争データをダウンスケーリングしてミクロな地理的要因との関連性を議論し始めた環境安全保障論にヒントを得るために,ロンドン大学東洋アフリカ研究院の図書館にてアフリカ関連文献を閲読した。研究分担者は,北パレ山塊地域において,(3)顕著な土地利用変化を起こしている区域を選定し,その社会経済的メカニズムを詳細に調査・検討することを開始した。とくに,河川流路近傍の樹木が都市開発にともなう建材製造の燃料需要の増大によって伐採され,著しく減少してきたことに着目し,毎木調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間的制約のため一部計画通りに収集できなかった情報はあるものの,GISデータベース基盤の構築作業は軌道に乗りつつあること,データベース画像のスケール特性を分析するための方法論について一通りの文献レビューを済ませたこと,その解析に実際に着手し,より効率よく進めるためのハード・ソフト環境を整えるに至ったこと,対象地域において顕著な土地利用変化を特定したこと,これらを踏まえての自己評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
顕著な土地利用変化を起こしている区域について,その社会経済的メカニズムを詳細に調査・検討する。そのために,農村生計の実態調査を行い,食糧確保,生計安全保障,貧困削減の状態を把握する。GIS解析において計画当初に想定していた地理的加重回帰分析,マルチレベルの階層線型回帰分析の応用と,本年度に導入した局所空隙性解析の使い分け,ないし選択について,事例に即した判断を行い,実行するとともに,対象とするメル山地域と北パレ山塊地域の比較研究の方法論について,とくに局所空隙性解析の応用可能性に注目しながら検討していく。
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